サブスクリプションビジネスとは?課金モデル、将来性と今後の展望を解説
近年、急成長を見せているサブスクリプションビジネスは、BtoCのみならずBtoBでも多くの業界で導入されるようになりました。企業にとって安定した収益源であり、顧客と長期的な関係を築くための有力な手段でもあります。
本記事では、サブスクリプションビジネスの概要、サブスクリプションの主な課金モデル、成功のポイントについて、詳しく解説します。
1. サブスクリプションビジネスとは?
サブスクリプションビジネスとは、顧客から定期的に料金を受け取り、料金を受け取った分の期間に対してサービスを提供するビジネスモデルです。特にITソリューションで増えている「SaaS(Software as a Service)」の料金形態として多く採用されています。
サブスクリプションビジネスは、顧客への継続的なサービス提供が見込めることから、企業の安定した収益の確保が可能になります。また、顧客が価値を感じ続けなければ、すぐに解約されてしまい売上が減少するリスクがあるため、サブスクリプションビジネスを成功させるためには、顧客ロイヤルティーを高めていくことがポイントです。
近年では、長期的な関係性を構築するために、カスタマーサクセスという顧客の成功体験の実現や目的達成のサポートをする取り組みも進んでいます。
サブスクリプションビジネスを成功させるためには、顧客をつなぎとめることのできる継続的な価値提供が重要です。定期的に新しいコンテンツやアップデートを提供し、顧客のニーズに応え続けることが求められます。
2. サブスクリプションビジネス発展の背景
サブスクリプションビジネスが発展してきた背景には、消費者意識の変化とIT基盤の進化が大きく関係しています。
消費者意識の変化とIT基盤の進化がサブスクリプションビジネスを加速
近年では、「モノからコトへの消費」への移行や「体験の重視」が進んでおり、物質的な所有よりも体験やサービスの利用が重視される傾向にあります。たとえば、設備やソフトウェアのサブスクリプションビジネスでは、定額で最新設備や機能を試すことができる体験型のいわゆる「コト消費」や、ニーズの変化に応じた柔軟なモデルが市場を拡大させています。
同時に、クラウド技術やネットワークインフラの進化により、クラウドベンダーが展開するIT基盤を利用して、大規模な初期投資をすることなく、サービスや商品を顧客へスムーズかつ短期間で提供できるようになりました。
クラウド上のIT基盤は利用量の増加に応じて、迅速かつ容易に規模を拡張できるため、契約数の増加とともに売上が拡大し多額の利益を見込めるサブスクリプションビジネスと、相性がよい点も成長を後押ししています。
これらの変化により、企業は従来の売り切り型のビジネスモデルから、顧客との関係を維持しながら継続的な収益を見込めるサブスクリプションビジネスへの移行を始めています。
IT基盤の進化が顧客満足度向上の取り組みを推進
消費者意識の変化に応じた柔軟な利用プランや料金体系は、裏を返すと、顧客は十分な満足感を得られなければすぐにでも別のサービスに乗り換えてしまいます。
IT基盤の進化により、事業者は大規模な投資を抑えながらもサービスを拡大できると同時に、顧客の利用履歴や行動データを収集しやすくなりました。
こうしたデータの活用がスムーズになった結果、満足度の低下や解約を回避するためにも、顧客のニーズを的確に把握し、企業ごとに個別のサービスを提案したり、利用履歴にもとづいたパーソナライズなど、サブスクリプションサービスにおける顧客満足度の向上を図る施策を積極的に進められるようになっています。
3. サブスクリプションビジネスの代表的な課金モデル
次に、サブスクリプションビジネスにおける代表的な課金モデルを紹介します。
定額課金
月単位や年単位など定額の料金を支払うことでサービスを利用できる課金モデルです。サービスの利用内容や利用量にかかわらず、一定の料金が課金されます。
事業者側には、毎月の収益予測や長期的な計画を立てやすいというメリットがあります。一方、顧客にとってのメリットは、一定の料金を払えばサービスが使い放題となる点です。事業者にとっても、顧客にとってもシンプルでわかりやすい課金モデルといえます。
代表例
- 産業用ロボットのリースとメンテナンス
- リスクマネジメント、コンプライアンス管理などのコンサルティング
- 1ユーザーあたり定額で利用できるSaaSのオフィスツール
- 定額でセキュリティ維持が可能なエンドポイントセキュリティ製品
- 飛行機のエンジンをサブスクリプションモデルで提供
- 定額で視聴できる映像・音楽・電子書籍などのデジタルコンテンツ
従量課金
サービスの使用量に応じて料金が変動する課金モデルです。顧客側にとっては、月ごとにサービスの利用内容や使用量が大きく変わる場合にメリットを感じやすい課金モデルといえます。また、使用量に応じた請求となるため、納得感が得られやすい点も特徴のひとつです。
一方、事業者側にとっては、顧客の利用が増えればその増分に相応し収益も増加するため、利用の増加が見込まれる分野では大きな収益拡大を期待できます。
代表例
- 使用したストレージ容量、データ転送量などに応じて課金されるクラウドベースのサーバー・ストレージサービス
- ECサイトや店舗などで利用できる、決済件数に応じて課金されるオンライン決済代行サービス
- 使用した通信料や通話料に応じて課金されるモバイル通信サービス
ハイブリッド
定額課金と従量課金を組み合わせた、ハイブリッド型の課金モデルも存在します。定額料金にプラスして、利用量に応じて従量課金される仕組みです。例えば、最低料金(下限)と上限が設定されている「ダブル定額」や、最低料金が設定されそれ以上は利用量に応じて従量課金となる「ミニマムチャージ」、上限に達するとそれ以上は料金が発生しない「キャップ制」などさまざまな課金モデルを用意することができます。
事業者側は定額料金で一定の収益を確保しつつ、利用量に応じた追加収益を得られるメリットがあります。
代表例
- 月額たとえば10人(最低人数)から契約が可能で、11人目以降は1ユーザーあたりの追加費用が発生するCRM・SFA・MAなどのマーケティングツール
- 一定の利用量までは定額料金で提供され、基準値を越えると利用量に応じて追加料金が発生する、もしくは上限に達すると定額以上の料金が発生しないモバイル通信サービス
フリーミアムモデル
フリーミアムモデルは、基本的なサービスや製品を無料で提供し、追加機能や高度なコンテンツは有料で提供する課金モデルです。まず無料ユーザーを引きつけ満足度を高めつつ、最終的に利用者の一部が有料版にアップグレードすることを狙います。
代表例
- 基本的なやりとりや会議機能を無料で提供し、同時参加人数を増加させた会議機能や、ログの保存期間の制限をなくし監査やセキュリティ機能の強化を必要とする企業向けに有料プランを提供するコラボレーションツール
- タスク管理は無料で利用でき、追加機能としてレポート作成や高度なアクセス権管理などを有料プランで提供するプロジェクト管理ツール
- 一定の範囲であれば無料で閲覧できるが、すべての話を読むためには会員登録して月額料金を支払う必要がある漫画サービス
4. サブスクリプションビジネスで使われる用語
サブスクリプションビジネスでよく利用される用語について、具体的な使用例も交えて解説します。また、サブスクリプションビジネスでは、カスタマーサクセスの取り組みも重要となるため、ここではカスタマーサクセスに関連した用語もあわせて解説します。
LTV(Lifetime Value)
LTVは「顧客生涯価値」を意味し、一人の顧客が企業にもたらす総収益を示しています。LTVを高めることは、企業が一人の顧客から得られる収益を高めることを意味します。
顧客と長期的な関係を築いていくサブスクリプションビジネスにおいて、重要な指標といえるでしょう。
例:月額100万円のサブスクリプションサービスを3年間利用する顧客の場合、LTVは3,600万円(100万円×12カ月×3年間)。
MRR(Monthly Recurring Revenue)
MRRは「月次経常収益」を指す言葉であり、毎月安定的に得られる収益を示します。企業の収益の安定性を評価するために用いられます。
売り切りビジネスと異なり、サブスクリプションビジネスにおいては月次や年次などで一定の収益が発生し続けるため、MRRの指標により収益性を測定するアプローチが有効です。
例:月額100万円の料金を支払う顧客が100人いる場合、MRRは1億円(100万円×100人)。
ARR(Annual Recurring Revenue)
ARRは「年次経常収益」を指し、MRRを12カ月分に換算したものです。MRRと同様にサブスクリプションビジネスにおいては重要な指標であり、特に長期的な収益の予測に利用します。
例:MRRが1億円であれば、ARRは12億円(1億円×12カ月)。
CAC(Customer Acquisition Cost)
CACは、1人の顧客を獲得するために費やした単価を示す指標です。CACを低く抑えることで、企業は効率的に顧客を増やすことができます。
例:マーケティングキャンペーンに10万円を費やし、50人の新規顧客を獲得した場合、CACは2,000円(10万円÷50人)。
チャーンレート(Churn Rate)
チャーンレートは「解約率」を指し、一定期間内にサービスを解約した顧客の割合を示します。顧客との関係性が重要であるサブスクリプションビジネスにおいては、チャーンレートの継続的なチェックと改善策の検討が重要です。低いチャーンレートを維持することで、サブスクリプションビジネスの収益性を維持できます。
例:月初めに100人の顧客がいて、その月の終わりに90人に減少した場合、チャーンレートは10%((100人-90人)÷100人)。
5. サブスクリプションビジネスの将来性
ここでは、サブスクリプションビジネスの将来性について、市場の成長予測やAI、IoT、ビッグデータを活用したデータドリブンなサービスの提供などについて解説します。
サブスクリプションビジネス市場の成長
近年、サブスクリプションビジネス市場は急速に拡大しています。BtoCだけでなく、BtoBにおいても、さまざまな分野でサブスクリプションビジネスが採用されている状況です。
サブスクリプションビジネス市場の成長は今後も続き、多くの企業が新たに市場参入することが予想されます。
データドリブンなサービスの提供も
サブスクリプションビジネスの未来を語るうえで、AI、IoT、ビッグデータの活用は欠かせません。これらの技術を駆使することで、企業はパーソナライズされたサービスを提供し、他企業との差別化を図れます。
たとえばAIを活用したレコメンデーションエンジンにより、ユーザーの過去の行動や好みにもとづいて、最適なコンテンツや商品を提案するといった取り組みが考えられます。BtoCではユーザーの好みに応じたレコメンド、BtoBでは建設機器のメンテナンスに関するレコメンドなどが具体例です。
また、ビッグデータの分析によりユーザーのニーズや市場トレンドを正確に把握し、短期間で提供サービスをアップデートするような施策も有効です。
サブスクリプションビジネスでは、今後、データドリブンなアプローチが採用されるようになり、データが顧客満足度の向上や業績の向上へと貢献していくと考えられます。他企業との競争を勝ち抜いていくためにも、データを活用した取り組みがますます重要となるでしょう。
6. サブスクリプションビジネス成功のポイント
サブスクリプションビジネスの発展も踏まえつつ、サブスクリプションビジネスを成功させるためには、以下がポイントとなります。
顧客目線でのサービス設計
顧客のニーズや期待に応えるサービスを提供するためには、顧客の立場に立ってサービスを設計することが重要です。顧客フィードバックを定期的に収集し、それをもとにサービスを改善することで、より高い満足度を実現できます。
高い満足度でサービス・商品を利用してもらうためには、提供機能の性能だけでなく、ユーザビリティの向上やサポート体制の充実なども重要な要素となります。
プロセスのシンプル化
サブスクリプションビジネスでは、顧客が手軽にサービスを利用できるかどうかは重要なポイントです。そのためには、契約手続きや支払いのプロセスを簡素化し、ユーザーがストレスなくサービスにアクセスできる環境を整えることが推奨されます。
同様に、サービス提供側の業務プロセスも、シンプルにすることが重要です。業務効率化を高め、顧客対応の迅速性をあげることで、顧客満足度の向上につながります。
データの利活用
顧客の行動や嗜好に関するデータを収集・分析することで、パーソナライズされたサービスを提供できるようになります。たとえばBtoCではデータを通して顧客の動きを分析し、施策に反映させることで、顧客満足度を高め、リテンション率(定着率)を向上させることができます。また、BtoBでは顧客との商談データを活用した商品・サービスの提案などが考えられます。
7. サブスクリプション管理システムの選定ポイント
サブスクリプションビジネスを発展させ、顧客の利用促進を進めるためには、ビジネスの特性や成長段階に応じて、最適なサブスクリプション管理システムを選定することが重要です。システムの活用においては、以下の点を考慮して選定をすることをおすすめします。
コストバランスの考慮
システムの導入にあたっては、導入にかかる初期費用だけでなく、運用中のライセンス費用や運用コストも含めて総合的に評価することが重要です。
特にサブスクリプション型ビジネスでは、サービスが立ち上がったばかりであれば契約件数も多くはないものの、サービスが拡大してくると顧客管理や請求管理が煩雑になります。そのため、初期段階から請求管理や顧客データ管理を効率化できるサブスク管理システムを導入し、運用基盤を整備することが望ましいといえるでしょう。
これにより、管理工数を削減しスムーズな運用を実現できるだけでなく、将来の成長を見据えたトータルコストの最適化につながります。
スケーラビリティ(拡張性)があるか
今後、複数のサブスクリプションビジネスを展開していくことを見据え、全社のサービス基盤として活用できるかも重要なポイントです。
全社レベルで統合的に活用できるシステムを選定することで、事業の成長に合わせて柔軟にスケールアップできる基盤が整います。
自社の事業計画・顧客獲得計画を踏まえ、全社的なシステム戦略として活用できるかを長期的な視点で検討し、拡張性の高いシステムを選定していくことが重要です。
請求・顧客管理機能の柔軟性
請求機能や料金計算機能、顧客管理機能の柔軟性もチェックしましょう。多くのサブスクリプションサービスでは、さまざまな顧客層のニーズに柔軟に対応するため、複数の料金プラン設定や支払い方法を採用しています。導入するシステムは、利用したい設定や機能に対応できる必要があります。
信頼性とサポート体制
システム導入にあたっては、ベンダーの信頼性とサポート体制が重要です。システムを長期的に運用していくにあたり、信頼できるベンダーによる手厚いサポートが受けられるかは、システムの安定運用に直結します。
8. サブスクリプションビジネスを次のステージへ
サブスクリプションビジネスを次のステージへと進めていくためには、ここまで紹介したポイントを踏まえたビジネス展開が重要となります。一方で、サブスクリプションビジネスを新事業として検討している企業においては、サブスクリプションビジネス特有のノウハウや経験が不足しているケースもあります。また、すでにサブスクリプションビジネスを導入しているものの、成果が出ていない企業も多く存在します。そのような場合、知見を持った外部企業のサポートも検討すべきでしょう。
当社では、サブスクリプションビジネスを始めようとしている方、すでに始めている方に向けて、サブスクリプションビジネス支援ソリューションを提供しております。「サブスクリプションビジネスをどのように設計すればよいのか悩んでいる」「毎月の課金・請求業務の負荷が高い」といった悩みを抱えている方はぜひお問い合わせください。
9.まとめ
サブスクリプションビジネスを成功のポイントは、顧客目線でのサービス設計を行いつつ、自社の業務プロセスを効率化することです。そのためには、サブスクリプションビジネスの設計や運用におけるシステムの有効活用が重要となってきます。
サブスクリプションビジネスに関して悩みごとのある方は、ぜひ当社を成功のパートナーとしてご活用ください。

