日立ソリューションズは、社会生活や企業活動を支えるソリューションを提供し、持続可能な社会の実現に取り組んでいます。

ベトナム、インドなど、 パートナー企業と築く、 サステナブルな海外ソフトウェア調達戦略

国内IT人財の不足が深刻さを増す中、海外との連携によって開発リソースを確保する動きが加速しています。 日立ソリューションズでは、いち早く「海外ソフトウェア調達」に着目し、なかでも近年はベトナムやインドといった国々とのパートナーシップを強化してきました。 そんな海外との取引の、窓口に立つのが調達部門です。文化や商習慣の違いを越えて、どのように協創の土台を築いてきたのか。 グローバルなビジネスの最前線に立つふたりに、業務で積み重ねてきたグローバルの経験やノウハウ、将来の展望について語ってもらいました。

集合写真
飯田さん

株式会社日立ソリューションズ
調達本部
ソフト調達部
主任

飯田 佳代

入社以来、ソフトウェア調達の企画・バイヤー業務に従事。現在はスタッフ部門の発注業務に加え、海外グループ会社、及び新規海外パートナーの活用拡大施策推進へ取り組んでいる。

新宮さん

株式会社日立ソリューションズ
調達本部
ソフト調達部

新宮 萌

入社以来、ソフトウェア調達業務に従事。人事ソリューションや通信インフラを扱う事業部の発注支援に加え、グループ会社であるHitachi Solutions India Pvt.への発注も担当。現在は、海外グループ会社との取引拡大に向けた支援にも取り組んでいる。

集合写真

世界を舞台に、 モノの調達だけではなく 「システム開発」を 委託する仕事

おふたりが所属する調達部門の役割について、あらためて教えてください。

飯田:一般に「調達」というと、物品や資材の購入を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、システム開発の事業を行っている当社が調達するのは、モノだけではありません。社外のパートナー企業に開発業務を委託し、システム開発の技術者を社外から調達することも、私たちの重要な仕事です。

こうした業務は「ソフトウェア調達」とも呼ばれ、私も入社以来20年にわたって、この領域でキャリアを重ねてきました。現在は主にパートナー企業との窓口となる「バイヤー」として、さまざまなプロジェクトに携わっています。

新宮:私も2021年の入社以来、一貫してソフトウェア調達の仕事を担当してきました。今は飯田さんと同じバイヤーとして、人事ソリューションや通信インフラなどを取り扱う事業部門と連携しながら、パートナー企業からの技術者の調達を担っています。案件ごとに求められる技術やスキルも異なるため、最適なパートナーを選定し、調整を進めていくことが、私たち調達部門の腕の見せどころです。

飯田:調達先は、国内だけではありません。案件によっては、海外のパートナーとも連携しながら、技術者の安定確保に努めています。当社では、国内IT人財の不足を背景に、他社に先駆けて海外ソフトウェア調達に注力してきました。近年は、ベトナムやインドといった国々との取引も活発になってきていて、私たちにもよりグローバルな視点が求められるようになっています。

新宮:国内におけるIT人財の不足が顕著なのは、クラウドを活用したシステムやサービスなどのような先端領域です。なかでも要件定義などの上流工程を担える人財を、国内だけで確保するのは容易ではありません。そういった意味でも、海外ソフトウェア調達の重要性は、今後もさらに高まっていくと感じています。

海外ソフトウェア調達ならではの課題やトレンドはありますか?

飯田:良くも悪くも国際情勢の影響を受けやすいことは、大きな課題のひとつだと思います。たとえば、私たちが海外ソフトウェア調達に乗り出した当初、取引先のほとんどは中国企業でした。しかし近年は、新型コロナウイルスの感染拡大や自然災害、地政学的リスクなど、先行き不透明な環境におけるサプライチェーンのレジリエンスを高めるために、ベトナムやインドにもパートナーを拡げています。

新宮:ベトナムとインドの共通点としては、まずは労働人口の母数が非常に大きいことが挙げられます。国を挙げてIT教育に注力しているので、優秀なエンジニアも多く、最新技術のキャッチアップも早い。私たちが求める技術領域との親和性も高く、既に多くの案件で成果が出ています。

異文化理解からはじめる、 海外ソフトウェア調達の土台づくり

おふたりもベトナムやインド企業へのソフトウェア調達案件を担当していると伺っていますが、実際に現地を訪れることもあるのでしょうか?

新宮:昨年、一昨年と、一度ずつインドを訪れています。現在、インドの調達先は、グループ企業であるHitachi Solutions India Pvt. Ltd.との連携が多いので、現地の担当者と膝をつき合わせて単価交渉をしたり、来年度の発注量増加に向けた施策を検討することなどが、出張の主な目的でした。

現地に足を運んでみると、想像していたよりも快適に過ごせることに、まずは驚きました。食事もおいしいですし、なによりとても活気があったことが印象的でした。日本とは違って、職場でもカラフルな服を着ている人が多いことも記憶に残っています。

飯田:私は主に、ベトナムを担当していて、これまでに何度も現地を訪れています。ベトナムでは、当社のグループ会社以外の企業とも取引をしており、私は単価交渉から、業務提携の調整、技術面の擦り合わせなどに携わってきました。

ベトナムというと、製造業のイメージが強いかもしれませんが、その勤勉な国民性を活かして、ITの分野も目覚ましい発展を遂げています。とりわけ、エンジニアとして社会で活躍する女性が多いことも印象的でした。

新宮さん
そうした出張や、日々のやりとりの中で、特に印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

新宮:カルチャーギャップというか、労働観の違いを意識させられることは多いですね。インドの担当者から「今日は渋滞しているから、打ち合わせは欠席します」と急に連絡がきたり(笑)。私だったら、交通事情で遅れる場合、なんとかオンラインで打ち合わせに参加しようとすると思うので、最初は驚きましたが、そういう感覚の違いにも、段々と慣れてきました。

飯田:そうした価値観や文化の違いを埋める「橋渡し役」になることも、実は私たちの大切な仕事です。たとえば、私は以前、インドのいくつかのパートナー企業を従業員に紹介する社内イベントを企画したことがあります。インドとの取引がはじまったばかりの時期だったので、まずは「社内のみんなに、少しでもインドを身近に感じてもらおう」ということが目的でした。

新宮:それは私も初耳でした! 具体的に、イベントではどのようなことが行われたのですか。

飯田:簡単な展示ブースを設けて、現地企業を紹介したりしましたが、ポイントになったのは「異文化に触れる体験」だったと感じています。たとえば、その場でチャイを淹れてみなさんに振る舞ったり、インドのパートナー企業の人たちを招いての懇親会では、ヴィーガン(純採食主義)の方でも食べられる料理をみんなで味わったりもしました。

そうやって海外パートナー企業の「顔」や「文化」を知ってもらうことで、社内の雰囲気も少しずつ変わっていったように思います。「異文化との協創は、こういうところからはじめるのか」と実感した出来事でした。

そのほかに海外パートナー企業との
スムーズな連携を実現するために、
意識していることはありますか?

飯田:依頼内容や納期、確認のタイミング、こちらが求める品質などについては、あらかじめ明文化し、認識のすり合わせを行うようにしています。たとえば、日本人同士であれば、契約書や仕様書などの行間を読んで相手の意図を汲み取ることもできます。しかし、海外のパートナー企業にそこまで求めるのは難しく、不要なトラブルの原因にもなりかねません。

だからこそ、日本側の意識改革も重要です。特に仕様書を作成する事業部のメンバーには、こうした認識をしっかり共有するようにしています。また、案件を進めるなかで、コミュニケーションに齟齬が生じそうなときは、私たちがいつでもフォローアップできる体制も整えてきました。

新宮:私も同じようなことを心がけています。あとは、すごく基本的なところですが、海外との取引では、法律や税制、商習慣の違いにも注意が必要です。契約書を確認するにしても、その国の法的枠組みを理解していなければ、リスクや問題点を見落としかねません。

調達部門では、過去の事例をナレッジとしてまとめているので、そうした資料も参考にしながら、こまめな情報収集を心がけています。

飯田さん

互いをリスペクトし、 未来志向のグローバルパートナーシップを

今後さらなる海外ソフトウェア調達拡大のために、考えていることや取り組んでみたいことはありますか?

新宮:インドでは経済成長にともなって、日本との人件費の差がみるみる縮まりつつあります。コスト面での優位性は、かつてほど大きくはありません。一方で、AIやクラウドなど先端領域に長けた人財が多いことは、インドの大きな強みです。そうしたポテンシャルを生かすためにも、新たな協創のかたちを模索するべき時期に差し掛かってきたと感じています。

飯田:同感です。単なるコスト比較ではなく、それぞれの国が有する技術力をいかに組み合わせ、付加価値の高いアウトプットを生み出していくのか。インドやベトナムに限らず、これから海外ソフトウェア調達に取り組む上で、欠かせない視点だと思います。

新宮:そうした視点を踏まえた上で、新たな調達先の開拓にも挑戦していきたいと考えています。アジア以外にも、経済が急成長しているアフリカ諸国の中からも、新たなパートナー企業が見つかるかもしれません。固定観念にとらわれず、常に高く広くアンテナを張って、日々の業務に取り組んでいきたいですね。

飯田:海外ソフトウェア調達の仕事は、どうしても「人と人との関係性」でできている側面があります。その反面、注意しておかないと業務が属人的になってしまう可能性があります。そこをいかに仕組み化していくのか。知識や経験はもちろん、取引先との関係値も含めて、部内で共有できる体制づくりを進めていきたいと考えています。

新宮さん
海外パートナー企業との協力関係が進むことは、
SXを推進する上でも
大きな意味を持ちそうですね。

飯田:そう思います。持続可能性ということを考えたときに、やはり大きな課題になってくるのが人財不足です。もう10年以上前から指摘されてきたことですが、これを放置すれば業界全体の縮小は避けられないでしょう。かといって、海外から優秀な人財を大量に確保できる時代でもありません。

だからこそ、これからあらためて必要なのが、パートナー企業との関係性を丁寧に育てていくことだと考えています。日立ソリューションズとなら、一緒に新しいことができるかもしれない。そう思ってもらえる企業であり続けることが、事業の持続可能な成長にもつながっていくのではないでしょうか。

新宮:そのために調達の窓口となる私たちとしても、パートナー企業とこれまで以上にWin-Winな関係性を築けるよう、努めていきたいですね。

たとえば、私たちには長年の実績と、日立ブランドという資産があります。それをしっかりとパートナーにも還元しながら、私たちも彼らから最先端の技術や知見を積極的に学んでいきたい。そうやってお互いをリスペクトし、成長し合える関係性こそが、本当の意味でサステナブルな協創のあり方だと感じています。

飯田さん
集合写真
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