日立ソリューションズは、社会生活や企業活動を支えるソリューションを提供し、持続可能な社会の実現に取り組んでいます。

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“みんなが主役”のSX。
新しい社会価値を
創出する企業へ、
ボトムアップの文化で挑む。
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選ばれる会社であり続けるために。動き出したプロジェクト

50年先も、人財も企業も惹きつける「求心力ある日立ソリューションズグループの創生」をめざし、SXプロジェクトが2024中期経営企画に併せて始まりました。2021年に就任した山本社長が自らオーナーとなり、地球社会のサステナビリティに視点を据え、経済価値と社会価値、環境価値の向上を図ることで、持続可能な社会への貢献をめざします。

2022年度には、新たな道標となるミッション・ビジョン・バリュー(MVV*1)を策定するとともに、全従業員参加型の企業活動、事業活動のアイデアソンを開催しました。

企業のサステナビリティ領域におけるプロジェクト経験を数多く有するPwCコンサルティング 木村氏によるファシリテーションで、山本社長がSXを語りました。

*1 MVV : 企業理念:Mission/経営ビジョン:Vision/大切にする価値 : Values
山本 二雄

株式会社日立ソリューションズ
取締役社長

山本 二雄

1978年日立製作所入社。金融システム事業部長、執行役常務金融ビジネスユニットCEOなどを経て、2021年4月に日立ソリューションズの代表取締役 取締役社長に就任。就任後は、従業員とのコミュニケーションを積極的に図り、人財育成や事業創出のための画期的な制度を次々と導入。自らが主導し、ボトムアップによるSXを推進してきた。
木村 弘美

PwCコンサルティング合同会社
執行役員(対談当時)

木村 弘美

大手ハイテク企業を中心に、経営課題の解決に向けた戦略の立案からシステム導入まで幅広く支援。日立グループとの協業を含め、デジタル経営、サステナビリティ領域における新規事業戦略策定プロジェクトを多数リード。特にサプライチェーンマネジメントでは豊富な実績を誇る。同社初の女性パートナーとしてDEI概念の進化とその普及をリードしてきた。

13年ぶりにコーポレートフィロソフィーを改訂し、SXへと全力で舵を切る

木村:日立ソリューションズでは、発足以来掲げてきたコーポレートフィロソフィーを13年ぶりに改訂されましたね。

山本:先行きが不透明な時代にある中、地球社会の持続可能性に対する危機感が高まっています。そのような中、当社は、システムを構築するIT企業から社会の価値を協創するIT企業への次のステージに上がるため、全社で存在意義(パーパス)を議論し、道標となるMVVを再定義しました。

木村:MVVの改訂は、昨年度から始まったSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)プロジェクトの活動の一環として取り組まれたとお伺いしています。多くの企業がSXに取り組む中、日立ソリューションズにおけるSXプロジェクトの位置付けや特長についてお伺いできますか?

山本:SXプロジェクトは、今後10年、30年先でも、お客さまや従業員、パートナーの皆さまから選ばれ続ける会社であるために立ち上げた全社活動です。私の社長就任時の想いとして、SXを意識した事業運営をしていくと明確に掲げました。これまでお客さまの課題を解決してきたさまざまな強みを大切にしつつ、DXを通じて新しい社会価値を創出する企業になりたいと心に決めました。SXプロジェクトは、社会の変化を想定し、バックキャストで経営や事業を考えて全社で取り組んでいく、まさに「変革」活動なのです。

木村:昨今のサステナビリティに対する世の中の関心の高まりという外部環境と、新社長誕生という内部環境の変化とが同時期に重なったタイミングだったのですね。

対談で話す山本
対談で話す木村
主役は若手。経営層も現場もみんなで自分事化

木村:サステナビリティへの取り組みというと、投資家に対する情報開示やCSR活動の一環という位置付けで一部の担当部門を中心に取り組む企業がある中、日立ソリューションズでは多様な部門から従業員が参加し、「全社活動」として取り組んでいらっしゃるのは特長的です。

山本:過去のプロジェクトは、取り組むべきプロセスが見えていました。SXにはそれがありません。従業員一人ひとりが、さまざまな試みを繰り返しながら、仕事でもプライベートでも自分事化して考え続け、行動変容を促すことを狙い、全社活動として位置付けました。浸透には時間がかかりますが、焦らず定着させていく道を選びました。

木村:MVVは、若手中心に検討されたと伺いましたが、その狙いはどんなところにあったのでしょうか?

山本:はい。次世代を担い、変化を恐れない若手に、自分事として会社や社会の未来を考え、議論してほしいと考えました。MVVの原案を作り上げたワークショップでは、バックキャストの視点で未来の可能性を広げ、当社のパーパスを真剣に考えてくれましたね。

木村:全社活動として従業員の皆さんを巻き込み、SXへの理解のみならず、共感し、自分事化するためにはどんな施策を行われたのでしょうか?

山本:若手が作り上げた原案をもとに全社の声をアンケートで吸い上げたり、誰でも参加できるオンラインディスカッションの場を数回設け、ラジオ番組のように社内に流したりしました。経営層は若手からの提案を受け入れ、後押ししました。

MVVを策定するだけでなく、経営や企業文化にSXを浸透させることが大切です。そのため、私の考えを従業員の皆さんに知っていただく機会として、タウンホールミーティングを開催し、約5カ月間で延べ2,800名を超える方々とオンライン上で対話しました。有識者の方々をお招きして開催するサステナビリティ勉強会では、グループ会社を含め延べ約3,500名が参加し、SXへの理解を深めてきました。そして、社外の方も含め現場の従業員が自由に語り合うオンラインパネルディスカッションには、延べ約1,200名が集まってくれました。

オープンにつながる、多様性を活かす

木村:SXプロジェクトで実施された、各種取り組みについてのアンケート結果を拝見したのですが、8割という回答率の高さに驚きました。今の自分の仕事に直結するとは限らないSXに対して、これほど多くの従業員の方々がそれぞれの想いをもって積極的に参画されることは珍しいと思います。個々の意見が尊重され、経営に反映されるという信頼感が日立ソリューションズの企業文化を支えているんですね。まさに従業員とのサステナブルな関係構築が、SXプロジェクトの基礎となっているのを感じます。

山本:もともと当社には、ボトムアップで行動を起こしていくという企業風土があります。オープンでつながりを大事にするDNAですね。SXプロジェクトでも、幅広いステークホルダーとともに取り組んできました。MVVの策定では、お客さまやパートナーの声にも耳を傾け、反映していきました。お客さまや地域との協創事業においても、「DXラボ」というオンラインでの場を活用し、さまざまな事例が生まれています。

これからは、人と人とがつながる「コミュニティー」がますます重要になるのではないでしょうか。

木村:従業員だけにとどまらず、お客さまやパートナーさらには地域、社会とのオープンなつながりを大切にされ、協創を通じて新たな価値を創出するというのが重要なポイントですね。つながりを大切に、みんなで取り組んでいこうとする意識の高さは大きな特長だと感じます。

山本:社内外の人たちとつながろうとする姿勢は、まさにDEI*²ですよね。いろいろな人とのつながりは、他者との違いを受け入れることからはじまります。そして、経験や個性の違いを尊重し合い、高め合える環境が求められます。

多様性はイノベーションに不可欠です。SXの重要な要素でもあり、大切にしていきたい価値観です。また、人権や環境といった社会課題に向き合うためにも、DEIは必須であると思います。

木村:DEIというと、女性管理職比率や女性役員数などの話になりがちです。日立ソリューションズのDEIは、女性や日本人以外の比率を上げるといった属性の多様性だけではなく、異なる考え方や経験を尊重し、積極的に取り入れていこうとする企業文化の醸成をめざしていらっしゃると感じます。

山本:誰にでも得意なものとそうでないものがあります。ある種の欠点や障がいは誰もが持っているものです。私も、さまざまな従業員の方とお話をする機会があります。とても楽しい時間を過ごすことができますし、活躍を期待する気持ちが高まりますね。

木村:多様な個性や経験をもつ方々とのコミュニケーションは、新しい価値を生みだすポテンシャルと捉えることが大切ですね。アンケートを拝見しても、「つながり」や「支え合い」を、日立ソリューションズのDNAとしてあげている人が目立ちました。一人ひとりの強さも大切ですが、人と人とがつながって新しい価値が生まれる。こうした考え方が行き渡っているのが日立ソリューションズの強みの一つであると感じました。

山本:弱みや欠点を否定するのではなく、それぞれの良いところを伸ばそうと心がけてきました。一人ひとりが持つ能力や才能を最大に活かすという視点は、当社のSXを進めていく上で大切にしていきたいし、また、変化する環境の中で、持続可能な社会にもつながると思います。

*2 DEI: Diversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包括性)。企業経営において、従業員の多様な個性が最大限に発揮されることが高い価値創出につながるという考え方。

対談で話す山本と木村
心理的安全性のある環境で、グローバルな挑戦を後押し。人財育成の新たな試み

木村:「つながり」や「支え合い」を重視する日立ソリューションズにおいて工夫されている人財育成などの仕組みはありますか?

山本:入社3年目の方全員を対象に、昨年度から「若手ジョブマッチング制度」を開始しました。

対象者全員が、社内の求人へ応募して異動するか、現在の部署で継続して働くかを選択することができます。申請者の要望に沿った異動を実現するようにしています。

木村:PwCコンサルティングでもOEP(Open Entry Program)という制度があり、社内の求人へ応募して異動することができます。一人ひとりのキャリアプランに合わせて成長を支援する仕組みは、今後重要性が増すと思いますね。一方、管理職の立場からすると、優秀な人財は手放したくないものです。そういった意味では、若手だけではなく、管理職の皆さんも、制度の持つ意味や背景を理解していなければ成立しないと思います。

山本:部門や立場を超えて、管理職も人財育成の重要性を理解し、応援してくれています。

また、昨年度から、グローバル人財の育成を目的とした「スタートアップ創出制度」も開始しました。起業家をめざす従業員が、社内のアイデアコンテストへ2人1組で参加して、最終選考会で勝ち残れば、シリコンバレーで1年間、ベンチャーキャピタルと共同で開発したトレーニングを受けながら、事業立ち上げに必要な資金調達をめざして活動します。順調に行けば、独立してアメリカで会社を立ち上げることができるし、独立までできなかったとしても、チャレンジして得られた貴重な経験をもとに、当社に戻ってきてからの活躍が期待できます。

この制度への応募は、本人の意志が優先されるようになっており、管理職も理解してくれています。

木村:SXの活動では、「安心、安全」な環境を掲げる企業が多いですが、日立ソリューションズのように安心してチャレンジができる環境が具体的な人事制度として整っている企業はまだまだ少ないと思います。さらに、人財育成に対する時間軸の違いも感じます。今、このまま独立して大事な従業員が辞めてしまったら困るという短期的な目線ではなく、経験を積んで帰ってきたら、より大きな価値を生み出してくれると考える。長期的な視点で人の成長を捉え、個々の成長や幸せをめざすウェルビーイングの実現もサステナビリティにつながると思います。

山本:今、社会全般で、人財の流動性が高まっています。当社を巣立っていくことをネガティブには捉えていません。なぜなら、今後協創という形で、外の会社や業界で経験を積み重ねた仲間たちと、ワクワクするような新たな事業が生み出せるかもしれませんし、もし当社へ戻りたいという希望があれば、戻ってくることもできるからです。

昨年度から、「アルムナイネットワーク」という、退職者のネットワークを立ち上げました。現在100名を超える登録者があり、当社へのアドバイスをもらったり、再び当社へ戻ってきて働いたりしている人たちもいます。このようなつながりを大切にしていきたいと思います。

木村:部門だけでなく企業の壁を超えたボーダーレスなつながりこそが、会社や人の成長にも通じるという点で、真のサステナビリティですね。

山本:社内においても、若手のほか、管理職などのベテランを含めて、仕事のローテーションを図りながら、さまざまな経験をしてもらうことを重視しています。いくつかの仕事を経験することで視野も広がって、前向きに取り組むことができると思います。

セクターを超えたさらなる協創へ

木村:新しい価値を創出していくために、異なる価値観やミッションをもつ人財、組織の巻き込みや協創が重要になると思われますが、具体的に今後注力していきたいと考えていらっしゃることはありますか?

山本:はい。協創の可能性を広げていくためにも、多様なステークホルダーとのコミュニティーづくりにも挑戦し、また日頃から社会課題を肌で感じていらっしゃるNPO法人などとのつながりは、ぜひ強化したいと考えています。昨年度から進行中のアイデアソンプロジェクトでは、社会で困っている方々のために何ができるかを、若手からベテランまで多様な参加者が集まったチームの皆さんで真剣に掘り下げ、NPO法人などにもヒアリングして経営層に対して発表してくれました。

木村:NPO、NGOが持つ価値観を知り、つながることは、新たな事業のヒントになるかもしれませんね。イノベーションの創発に苦慮されている企業からもご相談をいただきますが、多様な価値観を受け入れ、組織や企業の壁を超えて、ボーダーレスにつながるということは重要なポイントだと思います。山本社長が視野に入れている次のステージについてお聞かせください。

山本:まずは、社内に根づき始めたSXの考え方を、企業活動として継承していきたいと考えています。

また、SXを実現する手段として、データの利活用は欠かせないことであり、DX(デジタルトランスフォーメーション)が非常に重要です。当社自身もDXに取り組み、データドリブン経営を加速させています。このノウハウをお客さまと幅広く共有していきます。

さらに、今年度は新たなMVVを道標としながら、現場や業務にSXを根付かせていくために、事業活動に当てはめていくマテリアリティ(重要課題)を策定しているところです。自社の経営のSXから、お客さまや社会のSXの貢献へ、既存の事業や新しいソリューションをベースに協創を通じて、価値を提供していきます。

対談で話す木村
対談で話す山本
次世代に、安心して暮らせる幸せな地球社会を引き継ぐ

木村:従業員一人ひとりをサポートする制度、それを許容する文化の醸成、企業を超えた社会との「つながり」の形成など、SXを実現するための下地が整ってきているように思います。改めて、SXを通してめざしたいことは何でしょうか。

山本:次世代に向けて、安心して暮らせる幸せな地球社会を引き継ぐことです。そして、そのためには自分たちが幸せであることが大切です。

DEIなどの社会価値を意識した活動を通じて、私たち自身が幸せになることがお客さまの幸せにつながり、持続可能な社会に貢献できると考えています。会社ができることは、従業員がさまざまな人たちと協創する基盤や仕組みを用意するとともに、従業員の幸せを積極的に支援していくことだと思います。

木村:MVVの原案をまとめた最終日のワークショップに私も参加しました。これを一過性のもので終わらせないために、「部門に持ち帰って定着させることが、選ばれて参加した自分の使命だ」と、参加された次世代リーダーの方々が誇らしげに語っているのを聞いて感動を覚えました。ワークショップを通じて参加者の方々が、SXの理解を深めるだけでなく、共感し、自分事化されたのは大きな成果だと感じました。さらにその成果を次の世代に受け継いでいくことで、真のサステナビリティが実現されていくと思います。

山本:SXを本気で根付かせていくことに共感し、自分事として捉えようとしてくれる従業員がボトムアップで増えていくことで、誰もが笑顔でワクワクして仕事ができる幸せな会社となり、社会や人々の幸せに貢献していけると信じています。