ビジネスコラム

【専門家監修】日本企業のペーパーレス化の現状とDXへの道
~DXに貢献できる仕組みに変えるには何が必要か?~

記事公開日:2025年6月27日

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ワークライフバランスや働き方の多様化、新型コロナウイルスの感染予防など、さまざまな社会情勢の変化に伴い在宅勤務が普及する中で、一気に広がっていった日本企業のペーパーレス化。その後、2024年1月に改正「電子帳簿保存法(以下、電帳法)」が施行されたことで、ペーパーレス化は避けて通ることのできないものになりました。しかし現在でも、ペーパーレス化に踏み切れていない企業は決して少なくありません。また、ペーパーレス化の取り組みは行ったものの、それをデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)に生かしきれていない企業も数多く見受けられます。それではDXに貢献できるペーパーレス化を実現するには、何が必要なのでしょうか。ここではペーパーレス化に関する企業動向に詳しい二人に話を聞きながら、ペーパーレス化の現状、課題、成功の条件などを解説していきます。

監修者

石田 育央

石田 育央

株式会社 日立ソリューションズ
スマートワークソリューション本部
ドキュメントマネジメントソリューション部
部長

成田 丈夫

成田 丈夫

株式会社 日立ソリューションズ
スマートワークソリューション本部
ドキュメントマネジメントソリューション部
主任技師

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ペーパーレス化の歴史と現在の状況

平成27年から28年(2015年から2016年)にかけて行われた電帳法の大幅な規制緩和によって、本格的に広がってきた企業のペーパーレス化。2018年には経済産業省のDXレポートが発表され、これを契機に業務のデジタル化と合わせて、ペーパーレスの市場が本格化しました。そして2020年に新型コロナウイルスの感染拡大が始まると、在宅勤務対応のためペーパーレスの流れは一気に加速。2024年1月の改正電子帳簿保存法の施行により、電子取引の取引情報は紙での保存が認められなくなり、電子保存が完全義務化されました。

ペーパーレス化の歴史と現在の状況の図

「この流れを振り返ると、ペーパーレス化には大きく2つの波があったと言えます」と言うのは石田。第1次ブームは新型コロナウイルスの感染拡大を背景にしたペーパーレス化、第2次ブームは2024年から始まった電帳法対応のためのペーパーレス化だと指摘します。

しかしその進捗は、諸外国と比べて遅れているようです。総務省の「令和6年版情報通信白書」によれば、デジタル化の取り組み状況について「実施していない、今後実施を検討」「実施していない、今後も予定なし」と回答した企業の割合は、米国が20.4%、ドイツが17.1%、中国が8.4%だったのに対し、日本は50.3%にも上っていたのです*1。これについて成田は「自分の肌感覚では、この状況はいま現在も変わっていません」と言います。ペーパーレス化に関しても、日本では「実施済み」と「未実施」に二分した状況であることが伺えます。

ペーパーレス化が進んでいない企業では、紙文化が根強いだけではなく、デジタル化に伴うコストへの懸念や、ITリテラシーの不足、法規制の理解不足などのハードルもありそうです。また、「長年続けてきた手順を変えたくない」といった、業務環境や手順の変更に抵抗を感じている方々の心理的なハードルの存在も見逃せません。

その一方で、取引先との関係性によってペーパーレス化が進まないケースも見受けられます。取引先が紙やFAXにこだわっていると、自社でもなかなか電子化を進めることができません。

さらに、紙書類ベースで行われているさまざまな手続きが複雑であるため、それらを電子化するのが難しいケースも少なくありません。特に、組織をまたいだ依頼や申請は「書面ありき」のことが多く、そのなかでも複雑な手続きほどデジタル化が遅れているのです。

ペーパーレス化の「実態」と「課題」

ペーパーレス化に着手した企業でも、新型コロナウイルス感染症の収束後は在宅勤務からオフィス勤務に戻ったことで、最終的にめざすペーパーレス化を実現できず不完全なまま停滞しているケースが少なくありません。「まずは・取りあえずは」「社内で発生する業務起因の紙書類を電子化」するレベルで止まっているのです。このようなケースでは、クラウドストレージを保存場所として利用しているものの、運用方法は従来のオンプレミスのファイルサーバーに近い状態であることが一般的です。

その一方で専門性の高い文書には、業務特化型のソリューションが使われているケースが少なくありません。また、業務システムに保存機能を持たせて電子データを保存しているケースもあります。社外との取引ではEDIプラットフォームの利用も増えています。請求書などの授受も、紙からPDFファイルへの移行が進んでいます。

「ただし、紙を取りあえずスキャンし、それをクラウドストレージなどに保存するだけでは、ペーパーレス化の真価を引き出すことは困難です。このようなケースではユーザーが『面倒だ』と不満を持つことが多く、その先でめざすべき業務効率化や負荷軽減、新たな価値創造にまで到達することは難しいのです」(石田)

ペーパーレス化の「実態」と「課題」の図

また、「電子化された書類を入れる箱だけ用意して、あとは好きに使うといった『勝手運用』が横行していることも問題です」と成田は指摘します。

「文書情報管理士としての視点でも、文書管理には明確なルールと方法論があり、文書の種別によっても扱いが変わります。例えば、あらゆる文書を箱に保存して、その中から必要な文書を検索エンジンやAIを使って力技で見つけ出すという方法もありますが、これは適切なアプローチではありません。最初から管理ポリシーを明確にし、社内の決裁文書や取引先との契約書など一定のレベルの管理が必要な文書は文書管理システムなどの詳細な管理が可能な環境に移して保管し、それ以外の文書は種別ごとのルールにのっとって保管するといった、"適材適所な"運用を行うべきです。このように、文書が適切に管理されている領域に対して検索エンジンや生成AIを活用することで、精度の高い情報をより効率的に得られるようになります」

ペーパーレス化をDXの一環として考えた場合、書類の電子化とその保管は、DXの前提条件に過ぎません。保管、つまり蓄積された「知の資産=ナレッジ」を活用し、そこから新たな価値を生み出すことがDXだからです。すでにペーパーレス化を行っている企業も、改めてそのやり方を見直すべき時期に来ていると言えそうです。

ペーパーレス化を成功させるための4カ条

では、「次のステップに進められるペーパーレス化」を実現するにはどうすべきなのでしょうか。これには大きく4つの条件があると二人は指摘します。

1. 環境や手順の変化に抵抗を感じている人々とうまく向き合うこと

「まだペーパーレス化できていない企業」の場合は、まず環境や手順の変化に抵抗を感じている「現状維持派」の方々と、どう向き合うかが重要です。なぜペーパーレス化したくないのかを徹底的にヒアリングし、課題解決の方法を提案し続けるのです。これによって、どこからならペーパーレス化に取り組めそうなのか、道筋が見えてくるはずです。

例えば、課題が「面倒」であれば「自動化」で負荷を軽減できる提案をします。また、「変えたくない」という意見に対しては、何を残すべきで、変えていい部分はどこなのかを探っていきます。「現状維持を求めている方々の意見に合わせて、柔軟にアプローチを変えていくといいでしょう。ただし急ぎすぎると失敗する可能性が高くなるので、現状を整理しながら落ち着いて進めていくべきです」(成田)

部分最適化からスタートするのも1つの方法です。例えば、ワークフローシステムを導入する場合、まずは抵抗感の少ない部門から導入し、小さくてもいいので成功事例をつくっていくのです。「このような既成事実があれば、他の部門にも導入するための突破口にできます」(成田)

2. 事前調査に時間をかけ過ぎないこと

ペーパーレス化が進まない企業に共通しているもう1つの課題は、事前調査に時間がかかりすぎていることです。先ほどの「現状を整理しながら落ち着いて進める」と矛盾するように聞こえるかもしれませんが、調査期間が長くなりすぎると変革へのモチベーションを保つことが難しくなり、途中で諦めることになりかねません。

「事前調査が長期化する理由は会社によって異なりますが、後述するように『目的の共有』を行うことで短縮できる可能性が高いようです。また、早い段階で専門家に相談することも、有効な手段だと言えます」(石田)

3. 目的やゴールを明確化し社内で共有すること

すでにペーパーレス化は実施したものの、なかなか次のステップに進めていない企業では、ペーパーレス化の目的やゴールが明確化されていないことが多いようです。これを明確化し、社内で共有しておかないと、プロジェクトが迷走して失敗しやすくなるのだと石田は指摘します。

4. 方針とルールを早い段階で明確化しておくこと

そして、最後に成田は「方針とルールを早い段階で明確化しておくことも重要です」と言います。これにより「勝手運用」を止めることで、ペーパーレス化における統制が効きやすくなり、新たな価値を生み出すための取り組みも進めやすくなるのです。

日立ソリューションズからの提案

それでは、この「4カ条」を実現するうえで、日立ソリューションズはどのような提案ができるのでしょうか。

「日立ソリューションズはペーパーレス化に25年以上取り組んでおり、お客さまのペーパーレス化の成功に貢献してきました」と石田。そのため膨大なノウハウを持っており、それにもとづくテンプレートやコンサルティングも提供しているのだと言います。

また成田は「お客さまが抱えているペーパーレス化の課題に合わせた情報収集の支援から、対面式での質疑応答や個別相談に対応するWeb相談会、コンサルタントによる調査・検討の支援、実際の仕組みづくり、運用・定着支援まで、幅広くカバーする具体的なソリューションもご用意しています」と説明します。

日立ソリューションズからの提案の図

例えば、まだペーパーレス化に着手できていない企業に対しては、「ペーパーレス化実現支援コンサルティング」として、ペーパーレス化の第一歩としての「社内文書の削減」を支援。現状調査の結果をもとに改善策を策定し、紙文書の削減・整理から情報のデジタル化推進までを一貫してサポートします。

「紙ドキュメントの電子化」では、実際に紙ドキュメントを電子化したあとの業務での活用シーンを想定した「推奨仕様」を提案。このような準備を事前に行うことで、より適切な管理・運用が可能になります。

ペーパーレス化で業務プロセスを改善したい場合には、文書管理業務を可視化し、あるべき姿を描く、といったコンサルティングも行っています。

「このほかにも、ワークフローシステムや電子契約サービス、電子帳簿保存法対応支援ソリューション、さらには活文 企業内検索基盤とRAG*2を活用して生成AIと連携させたソリューションなどもご用意しています」(成田)

ソリューション導入の際に考慮すべきこと

さらに二人は、このようなソリューションを実際に導入する際には、大きく3つのポイントに留意すべきだとも語ります。それは、①業務手順をどこまで標準化できるか、②将来の変化に対応できる柔軟なシステム構成か、③中途半端な「取りあえず」対策になっていないか、ということです。このようなことを意識しながら、自社のペーパーレス推進の計画やロードマップを見直すことで、ステップアップが容易になると言います。

ソリューションの構成に関しては、一般に「オールインワン型」と「部品型」がありますが、日立ソリューションズは「部品型」ソリューションに強みがあります。このアプローチは柔軟性が高く、現状の業務スタイルを維持したままデジタル化することや、既存システムと組み合わせて新しいシステムを構築する、将来起こり得る変化に対応する、といったことが容易です。新規にペーパーレス化する場合はもちろんのこと、ペーパーレス化の「ステップアップ」をめざす企業にもお勧めできると成田は指摘します。

「このように日立ソリューションズは、25年を超える豊富な経験にもとづいて、各種コンサルティングやソリューションを提供しています。ペーパーレス化に関するお悩みは、ぜひ一度当社に相談していただければと思います」(石田)

まとめ

ここまで見てきたように、日本企業ではペーパーレス化が着実に進んではきたものの、その進捗には大きな開きがあることがわかります。また実際にペーパーレス化に取り組んできた企業にとっても、重要なのはそれをステップアップさせ、DXに貢献できる状態にすることだと言えます。このようなペーパーレス化を実現するには、二人が提示する「4カ条」を意識して取り組みを進めていくといいでしょう。さらに、日立ソリューションズのような専門家に相談することで、ペーパーレス化の成功はより現実味を帯びてくるはずです。

株式会社 日立ソリューションズ 石田 育央、成田 丈夫

(脚注)

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