近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)がもたらす変革やメリットが話題になることが増えています。しかし、それを支えるためのITインフラ整備についてはなかなか理解が進んでいないのが現状です。今回は、DX推進にともなうネットワークトラフィック急増の特効薬として期待されているSD-WAN(Software Defined WAN)、インターネットブレイクアウトについて紹介します。
WANで、インターネットから切り離された閉域ネットワークからインターネットやクラウドにアクセスする場合、通常は本社やデータセンターに設置されたゲートウェイを経由します。ゲートウェイを経由することで、外部へのアクセスを管理し、セキュリティを担保していたのです。しかし、DXの進行により、各拠点にある何百台、何千台のPC、スマートフォンなどからインターネットやクラウドサービスにアクセスするとなると、その通信量は膨大になり、ゲートウェイに大きな負荷がかかるだけでなく、閉域ネットワークの帯域を逼迫させることになります。 この解決策として期待されているのが、インターネットブレイクアウト(ローカルブレイクアウトとも呼ぶ)です。インターネットブレイクアウトとは、簡単にいうと各拠点から直接インターネットやクラウドサービスにアクセスできるようにする仕組みのこと。閉域ネットワークのトラフィックの増加を抑え、快適な通信環境を実現します。将来的にAWS(Amazon Web Services)や Microsoft Azure、Office 365などのクラウドサービスへのアクセスが増加しても、閉域ネットワークへの影響を抑えて、利用できるようになるでしょう。 とはいえ、機密情報を扱う場合は、インターネットやクラウドサービスへアクセスを管理する必要があります。そこでインターネットブレイクアウトを実施する際は、アプリケーションや接続先ごとに、トラフィックを「本社やデータセンターのゲートウェイを経由させるもの」「各拠点からインターネットへの直接アクセスを認めるもの」に分類し、アクセス方法を設定します。 このインターネットブレイクアウトに必要なのがSD-WANという新しいタイプのWANです。SD-WANとは「ソフトウェア定義型ワイド・エリア・ネットワーク」のことで、物理的なルーターをはじめとするさまざまなネットワーク機器で構築されたWAN上に、仮想的なWANを構築し、ソフトウェアを用いて一元的に管理するものです。SD-WANを導入することで、インターネットブレイクアウトに必要な複雑なトラフィック制御が容易に行えるようになるのです。
従来型WANとSD-WANはどう違う?
SD-WANの利点は、インターネットブレイクアウトだけではありません。SD-WANは本来、WANの運用管理の軽減を目的としたものです。 従来型のWANでは、それぞれの拠点に設置したネットワーク機器は、そのベンダー専用のソフトウェアで個別に管理していました。そのため、拠点が増えれば増えるほど管理負荷も増大していました。しかし、SD-WANでは、WAN全体に対して一元的な運用管理が可能となり、情報システム管理者の負担を大きく軽減できます。 ネットワークのトラフィックの管理も容易になります。MPLS(Multi-Protocol Label Switching)、インターネット、LTE(Long Term Evolution)など、異なる通信手段が混在していても、全体のトラフィック状況を監視し、必要に応じて動的に帯域を調整する、あるいは経路を分けるなどの対策が可能。急なトラフィックの増加に対しての動的な制御も行えます。 また、新たな拠点をWANに接続するには、WAN用機器の設置と初期設定が必要となりますが、SD-WANの場合は初期設定をリモートで実行可能です。現地で「機器を開梱してLANケーブルを刺す」という物理作業は省略できませんが、現地のスタッフにLANケーブルを刺してもらえば、システム管理者が現地に足を運ぶ必要はありません。このゼロタッチプロビジョニング機能によって、拠点の新設や移転にも迅速に対応できるようになります。