サイバー攻撃の目的とは?どんな種類があるの?

サイバー攻撃の目的とは?どんな種類があるの?

サイバー攻撃とは、ネットワークを通じてPCやサーバー、情報システムへ侵入し、データの破壊や窃取、システムの停止などを引き起こす攻撃のことです。
サイバー攻撃による被害は世界各地で報告されており、その種類や手口は多様化・巧妙化しています。企業はサイバー攻撃の最新の傾向を踏まえて有効なセキュリティ対策を検討する必要があり、そのためには、社員一人ひとりがサイバー攻撃に関する理解を深めることが重要です。

警察庁※1やIPA※2が公開している調査レポートなどでも、ランサムウェア被害の継続や新たな技術を悪用した攻撃手法の出現が報告されており、企業を取り巻くサイバーセキュリティ上のリスクは依然として高い状況が続いています。
クラウド利用やテレワークの浸透、さらには生成AIをはじめとする新たな技術の普及によって、企業が守るべき領域が広がる一方で、サイバー犯罪の手口も高度化・巧妙化しています。
本記事では、企業を取り巻くサイバー攻撃の主な手口や被害事例、対策のポイントについてわかりやすく解説します。

最近のサイバー攻撃の動向

2000年代に頻発した従来型のサイバー攻撃を振り返ってみると、感染したコンピューターのシステムを破壊・増殖するマルウェア(ワーム)や、ネットワークから侵入してデータを盗むものが主流でした。これらは、ウイルス対策ソフトウェアの導入や定期的なスキャンによって対処されることが一般的でした。
しかし、クラウドやスマートフォン、IoT機器の活用に加え、テレワークをはじめとする働き方の変化により、守るべきシステム環境は大きく変化しました。これに伴い、攻撃者の手法も巧妙かつ多様化しています。
警察庁の調査レポート※3によると、依然として被害が続くランサムウェアの侵入経路において、全体の約6割が「VPN機器」の脆弱性や、漏洩した認証情報、設定不備などを突いたものであることが明らかになっています。また、感染した場合には、バックアップ復旧や専門業者による対応が必要となり、復旧に1,000万円以上を要したケースが全体の5割を占めています。 中には、費用が5,000万円、復旧期間が2カ月を超え、経営基盤が脅かされた事例もあります。
IPAが公表している「情報セキュリティ10大脅威(組織編)2026」においても、「ランサム攻撃による被害」が11年連続1位となっています。また、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が3位に初ランクインする一方で、「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」も8年連続で2位を維持しており、警戒が必要です。
最近のサイバー攻撃の大きな特徴は、セキュリティ対策が強固な大手企業を直接狙うだけでなく、関連会社や委託先など対策が手薄な企業を踏み台にしてターゲットへ侵入する手法が定着している点です。実際、被害企業の半数以上を中小企業が占めており、規模を問わずすべての企業が当事者として対策を講じる必要があります。

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サイバー攻撃者とその目的とは

このようなサイバー攻撃を仕掛ける攻撃者は、犯罪者、犯罪グループ、諜報員、産業スパイ、ハッカー集団、悪意ある内部関係者(退職者含む)や社外の犯罪組織などです。
また、その攻撃の目的は、どの不正行為にも共通して見られる金銭盗取や、国家や企業などの戦略に影響を与えるための機密情報の窃取、信用失墜を狙った組織犯罪、産業スパイ活動、ハクティビストによる政治的・社会的な主張など、攻撃者のタイプにより異なっています。
近年は、攻撃者が組織的かつ計画的に攻撃の発覚を遅らせるような手口で巧妙に攻撃を行い、被害の拡大・長期化を狙っています。さらに、データの暗号化だけでなく窃取した機密情報の暴露を盾に金銭を要求する二重脅迫も広がっています。
また、生成AIの活用により、攻撃に必要な文章作成やプログラム作成、情報収集などが効率化され、これまで高度な技術を持たなかった攻撃者でも攻撃を実行しやすくなっています。その結果、攻撃手法の多様化や巧妙化が進み、企業はこれまで以上に警戒が必要となっています。このような攻撃者の目的や手法を理解することが、効果的かつ効率的なセキュリティ対策を講じるうえで重要だといえるでしょう。

サイバー攻撃による被害事例

近年は、特定の企業を狙う標的型メールやアカウントの不正利用、DDoS攻撃、IoT機器やモバイル端末を踏み台とした攻撃などにより、システムの全面停止や業務中断に追い込まれる事例が急増しています。

ランサムウェアによる事業停止と多額の損失

ランサムウェアは、事業継続に不可欠なシステムや重要な情報を暗号化し、身代金を要求するマルウェアの一種です。
ランサムウェア感染による最大の被害は、「事業活動の完全停止」と「巨額の金銭的損失」です。一度感染すると、バックアップも含めたシステム全体が暗号化され、工場やECサイト、基幹システムが数週間から数カ月にわたり停止する事例が相次いでいます。
近年では、単にデータを暗号化するだけでなく、以下のような「二重の脅迫」や「ランサムウェアへの対策を上回る攻撃」によって被害が深刻化しています。

  • 情報漏洩による二次被害(二重脅迫)
    データを復元するための身代金に加え、「払わなければ顧客情報や技術情報をダークウェブに公開する」と脅迫され、社会的信用を失うケース。
  • 復旧手段の破壊
    自力での復旧を防ぐため、事前にバックアップデータまで破壊され、事業継続が困難になるケース。

警察庁のデータによると、国内の被害(公表されているもの)は年間200件前後に達しており、一企業の損害にとどまらず、取引先やサプライチェーン全体へ被害が波及する事態も発生しています。

医療機関や物流を麻痺させた「Qilin」などの感染事例

近年、国内外で深刻な障害を引き起こしているのが「Qilin(チーリン)」をはじめとする攻撃グループです。
実際にQilinによる攻撃事例では、VPN機器の脆弱性から社内ネットワークへ侵入された後、仮想化サーバー群が一括で暗号化され、顧客データベースが奪われる被害が発生しています。「データの復元」と「情報公開の阻止」の双方で身代金を要求され、調査・復旧費用を含めて数億円規模の損害が発生したケースもあります。
このような致命的な被害は、自社だけでなく「対策が手薄な委託先や関連会社」を経由して発生するケースが多く、サプライチェーン全体を巻き込んだ被害事例として警戒されています。

サイバー攻撃の種類と手口

サイバー攻撃にはさまざまな種類がありますが、インターネットを利用する以上、個人・企業ともに最新のサイバー攻撃の種類や手口を理解したうえで、リスクを回避する行動を取ることが重要です。
ここでは、日々進歩しているサイバー攻撃のなかで、代表的な手口について紹介していきます。

ランサムウェア

前章でも触れましたが、ランサムウェアは企業や組織に深刻な被害をもたらしている代表的なマルウェアの一つです。
不審なメールや添付ファイルをばらまいて感染を拡大する従来の攻撃手法だけでなく、攻撃者が事前に標的組織のネットワークへ侵入し、情報収集や権限昇格を行った後に展開されるケースも増えています。 また、VPN機器やサーバーなどの脆弱性を悪用した攻撃や、漏洩した認証情報を利用した不正アクセスなど、侵入経路も多様化しています。攻撃者はネットワークへ入った後に内部を横断的に調査し、重要なシステムやデータを特定したうえでランサムウェアを実行するため、被害が組織全体へ拡大する傾向があります。

標的型メール攻撃

標的型メール攻撃とは、特定の企業や官公庁などを標的として、重要なデータが保存されているシステムにマルウェアを感染させることで、機密情報などを窃取することを目的としています。標的型メール攻撃のなかで多いのは、ユーザーの業務内容に応じて、メールの件名や本文、送信元を偽装したメールを送り付け、マルウェアに感染させる手口です。
IPAの「情報セキュリティ10大脅威(組織編)」でも登場以降上位に位置し続けており、攻撃者は社会や働き方の変化に便乗し、ターゲットに合わせた巧みな攻撃手法をとることが特徴です。ランサムウェアの足がかりとして、情報を詐取する目的で利用されています。

フィッシング詐欺

フィッシングとは、公的機関や金融機関、ショッピングサイトなどの企業を装ってメールなどを送信し、正規のウェブサイトを模倣したフィッシングサイト(偽のウェブサイト)へ誘導することで、ID・パスワードなどの認証情報やクレジットカード情報をだまし取る手口です。
奪われた認証情報は、社内ネットワークへの不正アクセスやなりすまし取引に利用されます。
また近年では、IDやパスワードだけでなくワンタイムパスワードまで窃取する中間者攻撃(Adversary-in-the-Middle攻撃)なども確認されており、多要素認証を導入している環境でも被害が発生しています。そのため、認証情報だけに依存しない対策の重要性が高まっています。

クラウド・SaaSのアカウント侵害(ID奪取・設定ミス)

クラウドサービス(Microsoft 365や Google Workspace 、各種SaaS)の普及に伴い、社外からアクセスするための「アカウント情報(ID・パスワード)」そのものを狙う攻撃が増えています。
攻撃者は、フィッシング詐欺や漏洩した認証情報を悪用するリスト型攻撃などによってアカウントを不正に取得し、クラウドサービスへのログインを試みます。不正アクセスに成功すると、クラウド上の機密データの閲覧やダウンロード、情報の持ち出しなどにつながる恐れがあります。
また、クラウド環境におけるアクセス権限の過剰付与や共有設定の不備といった設定ミスを悪用されるケースも少なくありません。設定内容によっては、本来アクセスできない利用者が機密情報を閲覧できる状態となり、情報漏洩につながるリスクがあります。

サプライチェーン攻撃

国内の製造業が稼働停止に陥るなど甚大な影響により注目されるサプライチェーン攻撃は、IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026(組織編)」においても8年連続で2位にランクインしている深刻な脅威です。
攻撃者はセキュリティ対策の手薄な関連組織や利用サービスなどの脆弱性を標的として最初の攻撃をしかけ、それを踏み台として本命の企業を狙います。
自社のセキュリティ対策が強固であっても、取引のあるサプライチェーンを足がかりに、攻撃者の侵入を許してしまう恐れがあるため、自社だけでなく取引先や委託先のセキュリティ対応状況の確認が必要といえるでしょう。

DoS/DDoS攻撃

特定のサーバーやネットワークに対して大量のデータやアクセスを一斉に送りつけ、システムやサービスを停止させる攻撃です。単一の送信元から行われるものをDoS攻撃、マルウェアなどに感染させた無数の機器から一斉に行われるものをDDoS攻撃と呼びます。近年は、感染したIoT機器が踏み台として悪用されるケースが増えています。
DDoS攻撃は、サービス停止による機会損失や業務妨害をもたらすだけではありません。攻撃をおとりとして利用し、裏で本命の侵入攻撃を進める複合的な手口も確認されています。

ゼロデイ攻撃

ソフトウェアやOSの脆弱性が修正される前に、その脆弱性を悪用して行われるサイバー攻撃です。
近年は、フロンティアAIをはじめとする高度なAI技術の発展により、未知の脆弱性を悪用した攻撃のリスクが高まることも懸念されています。

まとめ

クラウド利用やテレワーク、IoT機器の普及などにより企業のシステム環境が進化・複雑化するなか、それを狙うサイバー攻撃の手口も高度化・巧妙化を続けています。ランサムウェアや生成AIを悪用した攻撃、サプライチェーンを踏み台にした侵入など、従来の境界防御や単一の対策だけでは防ぎ切ることが困難な時代を迎えています。
このような状況において、企業はサイバー攻撃によるビジネスへの影響を抑え込んでいく対策への取り組みが不可欠となります。特に重要なのが、事業継続の観点でセキュリティを強化する「サイバーレジリエンス」です。
サイバーレジリエンスは、サイバー攻撃に対する予測力・抵抗力・回復力・適応力を備えることで、想定外のインシデントが発生しても、ビジネスに与えるダメージを低減し、事業継続を可能にする取り組みです。
サイバー攻撃による事業継続への影響を軽微にとどめることができるため、今後の企業のセキュリティ対策を考えるうえで重要な考え方の一つといえるでしょう。

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