ページの本文へ

Hitachi

ワークスタイル変革ソリューション

コラム

人財の管理・分析 第10回
改善されない長時間労働の常態化……業務ルールを徹底するには?

長時間労働の抑止はあらゆる企業の課題

働き方改革関連法の一環として労働基準法が改正され、長時間労働を是正する動きが活発になっています。新しい労働基準法では時間外労働の上限規制を初めて定め、大企業では2019年4月から、中小企業でも2020年4月から施行されます。具体的には、時間外労働は原則として月45時間・年360時間に定められ、臨時の特別な事情があって労使が合意する場合に限り年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計で月100時間未満など一定の厳しい条件のもとで緩和が認められることになりました。
そもそも以前から、長時間労働の抑止は日本のあらゆる業種・あらゆる規模の企業にとって重要な課題となっていました。今回の法改正がその歯止めとなることが期待されますが、労働環境が比較的整備されている大企業でも全ての従業員に対して時間外労働の上限規制を漏れなく徹底させることは難しく、規模の小さな企業にとってはさらに難易度の高い課題といえるでしょう。
時間外労働の中でもとくに大きな問題となっているのが、個人の判断で行う残業や、サービス残業です。時間外労働に関する国のルール、さらには各社におけるルールがせっかく設定されていても、それをなかなか徹底できていないのが現状です。もちろん従業員の立場からすれば、べつに残業したいからしているわけではありません。ほとんどの従業員は、仕事が終わらず、やむなく残業しているわけです。
一方、中間管理職も深刻な状況にあります。ルールが設定されたことで、管理職は部下の長時間労働を抑止しなければなりません。となると、部下には定時での退勤を要請しつつ、終わっていない仕事を管理職が負担せざるを得ないという“しわ寄せ”も現実に見られます。
いずれにしても、2020年4月から中小企業も時間外労働の上限規制に取り組む必要があるため、具体的な施策を早急に考えなければなりません。

長時間労働の抑止に対する効果的なアプローチとは?

ここまで見てきたように、ルールを作るだけで常態化した長時間労働の現状を解消するのは難しいと言わざるを得ません。長時間の残業は長時間労働抑止のルールにそぐわないというだけでなく、残業する当人の健康を害する可能性もあるため、企業としては従業員の健康を守るためにも効果的な施策を導入する必要があります。
では、具体的にどういった施策を始めればいいのでしょうか。ルールを決めても個人の判断で残業するケースが後を絶たないなら、残業の際に会社や上司の承認が必要となるシステムを導入するという方法が一考に値するでしょう。
注目したいのが、業務PCを自動的にシャットダウンするシステムです。この種のシステムは、設定した時間、たとえば定時を過ぎるとPC画面上に「まもなくシャットダウンされる」旨のメッセージを表示するとともに、シャットダウンまでのカウントダウンが開始されます。従業員はそのメッセージを見て、シャットダウンまでに保存すべきファイルの処理などを行うことになるわけです。定時後はPCが使えないようになれば、従業員は基本的に仕事ができないため、退勤という選択肢を取りやすくなります。
とはいえ日によっては、どうしても残業しなければならないこともあるでしょう。そんなとき、PCシャットダウンシステムの画面上で残業申請を行い上司の承認を得るようにしておけば、必要に応じて残業も可能になりますし、管理職や人事担当者も従業員の残業状況を把握できるようになります。

PC自動シャットダウンシステムの効果とポイント

PC自動シャットダウンシステムは、機能としては定時以降にPCを使えないようにするというシンプルなものですが、それだけでなく、導入することで従業員の長時間労働に対する意識変革につながるというメリットも考えられます。どうしても残業が必要な場合、システムを通じて残業を申請することはもちろん可能です。ただ、残業のために一定の手続きを踏まなければならないとなれば、普段は定時で帰り、やむを得ないときのみまとめて残業するといった意識が生まれてくるかもしれません。
また、従業員だけでなく管理職の意識変革が起きる可能性もあります。たとえば残業申請が特定の部下から集中するようなら、その部下の作業を他の部員に回して平準化する、スケジュールを調整して負荷を減らすなどの対策が取れるようになります。そもそも上司としては、従来のように突発的な残業を命じにくくなるため、きっちり計画を立てて仕事を振り分ける習慣ができてくるはずです。
経営者、あるいは人事担当の立場からしても、こうしたシステムを導入することで「サービス残業のあぶり出し」「部署による残業の偏り」など自社の長時間労働状況を見える化でき、それを現状改善に向けたさまざまな施策立案に活かすことができます。
とはいえ、こうしたソリューションは、導入の検討段階や実際の導入直後に現場から反発が起きることも考えられます。厳しすぎる取り組みをいきなり実施しても、浸透は難しいでしょう。ですから経営者や人事など導入を推進する立場としては、急激な改善を目指し全社一律の厳格な取り組みとして導入するのではなく、残業が多い一部の部署から試すなど、緩やかに導入していくほうがより高い効果を期待できます。
多くのケースでは、導入からしばらくすると混乱が減り、従業員も定時でPCがシャットダウンされる状況に慣れてきます。同時に残業に対する意識も変わってくるため、それに応じたワークスタイルが浸透してきます。その過程で上がってきた従業員の声も反映し、さらなる改善に向けて残業申請のルールなどを整備していくといいでしょう。

まとめ

時間外労働をなくし、長時間労働が常態化した状況を解消する……これは企業にとってきわめて大きな目標です。とはいえ経営者が残業を機械的に禁止しようとしても、ルールの抜け道による残業は減らないばかりか、むしろ増えてしまう可能性もあります。
そこでフォーカスしたいのが、適切な労働時間の実現に向け、まずは個人の判断による残業をなくすなど、導入しやすく効果も大きな施策からスタートすることです。上司・会社が部下の残業状況を把握し、改善していくために、PC自動シャットダウンシステムのようなソリューションも効果的に活用しながら、従業員の時間外労働に対する意識変革を進めていくことが望ましいと思われます。定型業務をこなすRPAも導入するなど、業務の効率化・生産性向上とセットで進めていくとさらに効果的でしょう。
こうした取り組みが、法律で定められた時間外労働の上限規制順守だけでなく、従業員の健康増進、さらには働き方改革にもつながっていくはずです。