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SXは新たなフェーズへ。 AI時代の「安全・安心」な社会を 次世代、その先の人たちに送るために

2021年度にスタートした当社のSX活動は、2025年度から新たな「実践・定着フェーズ」へと移行しつつあります。AIの急速な進化、地政学リスクの高まり、気候変動。社会の不確実性が高まる中、日立グループのソリューションプロバイダとして、「安全・安心」な社会の実現をいかに具体的な成果として示していくのか。森田英嗣社長が、SXの実践を通じてめざす未来について語ります。

森田 英嗣

株式会社日立ソリューションズ 代表取締役 取締役社長

代表取締役 取締役社長 森田 英嗣

従業員一人ひとりがSXを 「自分ごと」として実践するフェーズへ

当社のSX活動は、2021年度にスタートいたしました。最初に取り組んだのは、会社としての存在意義、私たちがSXに取り組む意義を、明らかにすることです。それを起点として、コーポレートフィロソフィーの刷新、さらにはマテリアリティの策定を、若手従業員を中心として進めてきました。

このように、SX推進のための基盤づくりと試行を重ねる「準備フェーズ」を経て、2025年度からはSXを事業・企業活動へと本格的に組み込む「実践・定着フェーズ」へと加速させています。

新たなフェーズにおいて重要となるのが、従業員一人ひとりにSXを自分ごととして捉えてもらうことです。若手従業員と経営層が未来志向でディスカッションする「サステナビリティ・コミッティ」を立ち上げ、マテリアリティごとの具体的な取り組みやKPIを整理したのも、まさにそのためです。

2026年3月に開催されたコミッティでは、私たち経営陣も詳細を把握できていなかったマテリアリティごとの取り組みが、若手従業員から続々と報告されました。単なる理念ではなく、SX活動を持続可能なかたちで事業や企業活動の中に組み込んでいこうという意欲の高まりに、確かな手応えを感じています。

また、2025年度には新たに「価値創造モデル」も策定しました。ここで意識したのは、当社の事業活動における「サステナビリティ」と、社会全体の「サステナビリティ」が、どのようにつながっていくのかを示すことです。たとえば、安全・安心な暮らしの実現という社会的な要請に、私たちが磨いてきた建設・都市向けDXソリューションが、どのように貢献しうるのか。その関係性と道筋を、抽象的な理念にとどめるのではなく、具体的なモデルとして言語化しました。その結果、従業員一人ひとりが、自身の業務がSXにどのようにつながっているのかを理解しやすくなり、それぞれの持ち場でSXを「実践」に移せるようになってきています。

こうした取り組みが着実に浸透していることは、思わぬ場面でも実感しています。新たに入社した従業員向けのウェルカムミーティングでのことです。ある新人の従業員から、次のような質問を受けました。「入社前から、当社のSX活動に興味関心を持っていました。日々の業務のなかで、それにどのように貢献すればいいでしょうか?」自社のSXの考え方や取り組みが、入社前の段階からしっかりと届いていることを知り、まずは素直に嬉しく思いました。同時に、こうした若い世代の想いを受け止め、行動につなげていける環境を整えていくことこそが、経営者としての重要な使命なのだと、あらためて強く感じた出来事でもありました。

AI活用の取り組みについて語る森田英嗣

AI活用のフロントランナーとして、 AI readyな社会の実現をリードする

さらに今後のSX活動を考えていく上で、無視できないのがAIの台頭です。大規模言語モデル(LLM)をはじめとするAIの急速な進化は、IT業界にとどまらず、産業全体の構造を変えるほどの大きなインパクトをもたらしつつあります。そんな中で、当社は日立グループにおける「AI活用のフロントランナー」でありたいと考えてきました。そのために、自らAIを徹底活用し、日立グループとしてカスタマーゼロで検証し、そこで得た成果やノウハウをお客さまに広くお届けしようと、取り組みを加速しています。

では、そうしたAI活用の取り組みが当社のSX活動といかに結びついていくのか。それをわかりやすく表現したのが、「DX by AX toward SX」というスローガンです。AIを起点としたデジタル化(AX)を通じてDXを前に進め、その先に持続可能な社会へのトランスフォーメーション(SX)へ結びつけていく。AI活用とSX推進は、コインの裏表のように不可分に結びついています。

その具体的な施策のひとつとして、2025年度に上期・下期の2回にわたり、従業員からAI活用のアイデアや事例を募るイベントを開催し、年間約1,800件もの応募が寄せられました。

特に印象的だったのは、下期における応募内容の質的変化でした。まだまだ構想レベルのものがほとんどだった上期に対して、「すでに業務へ適用済み」「AIエージェント化済み」といった実績を伴うアイデアが大半を占めるようになったのです。AIの進化もさることながら、半年たらずの短い期間で従業員一人ひとりの意識と実践力が大きく引き上げられたことは、嬉しい驚きでした。

ただし、AIには光と影の両面があることも忘れてはなりません。私たちはITの専門家として、AIがこれまでにない新たなリスクを生み出していることも実感しています。だからこそ当社では、数年前からサイバーレジリエンスの強化やAI倫理に注力してきました。

特にセキュリティ分野においては、AIによる攻撃の高度化に対抗するために、防御する側もAIを最大限に活用していかなければなりません。それと同時に、個別の技術だけではなく、当社が培ってきたサイバーレジリエンスの知見をソリューションやコンサルティングサービスとしてお客さまに提供することで、AI readyが当たり前になる社会の実現をリードしていきたいと考えています。

「人財」への投資が、自発的な挑戦と協創を加速していく

一方で、どんなに技術が進歩したとしても、それを使いこなし、サービスを提供するのはあくまで「人」です。当社では、従業員一人ひとりの自発的な挑戦を尊重するボトムアップの文化を大切にしながら、SXの最大の原動力となる「人財」への投資を引き続き推進していきます。

たとえば、新規事業創出における社外の専門家による支援や先進企業との協創のもと、短いサイクルで顧客や社会課題を検証し、自社発の国内サービス事業の創出をめざす制度は、まさに従業員の自発的な挑戦を後押しする取り組みです。国内のみならず、シリコンバレーでのスタートアップ創出をめざす制度も展開し、実績が出ています。

両者に共通するのは、結果だけではなく挑戦のプロセスそのものに価値を置いているということ。たとえ事業化に至らなくとも、その経験は失敗も含めて、必ずや次なるチャレンジの糧となるはずです。ほかにも若手世代が自らの意思で「どの仕事(ジョブ)に挑戦するか」を選択できるジョブマッチングの制度の活用を通じて、挑戦する人財が育ち続ける企業風土を築いていきたいと考えています。

もちろん、どれだけ挑戦を重ねたとしても、社会課題が複雑化、高度化する中で、当社だけでの取り組みには限界もあるでしょう。だからこそ不可欠になるのが、お客さまやパートナーとの協創です。建設や自動車、通信など、幅広い業種と企業との協創を進めるとともに、シリコンバレーをはじめとする欧米各地にリエゾン活動の拠点を構えることで、世界各地の最先端ITの知見や技術をいち早く取り入れ、それを新たな価値創出へと活かしていきます。

こうした協創の営みにおいても、私たちは従業員の自発性を大切にしたいと考えています。経営者が「この会社と組みなさい」と号令をかけたのでは、本当のパートナーシップは生まれません。従業員一人ひとりが業界団体などの活動に参画し、自ら身近な社会課題に気づくこと。また、私たちが立ち上げたオープンなコミュニティ「ハロみん」を通じて、さまざまなアイデアをつなげること。そうしたなかで生まれる「一緒にやってみよう」という小さな結びつきこそが、やがて大きな協創の輪へと広がっていくと信じています。

未来について考える森田英嗣

誰もが幸せに生きられる、 「安全・安心な社会」を実現したい

今あらためて感じるのは、地政学リスクの高まりや、気候変動、そしてAIの台頭によって、社会の常識や枠組みが大きく揺さぶられつつあるということです。だからこそ、当社は日立グループのソリューションプロバイダとして、次世代、その先の方々も幸せに暮らすことができる「安全・安心な社会」の実現を、これまで以上に追求していきます。

それを抽象的な言葉ではなく、具体的な貢献のかたちとして示していくことが、SXの実践・定着フェーズにおける私たちの目標にほかなりません。その上で、スマートモビリティやセキュリティなどの事業を通じて、お客さまや社会のSXもより一層加速していきたいと考えています。

AIをはじめとするIT技術の力で、誰もがウェルビーイングに暮らせる社会を支えていくこと。「グローバル化・デジタル化がもたらす新しい景色を、すべての人へ」という経営ビジョンを実現すること。従業員一人ひとりの挑戦と協創を力に変えて、ステークホルダーの皆さまとともに、安全・安心で持続可能な社会への貢献を続けてまいります。