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子の看護等休暇とは?2025年4月法改正に伴う変更や取得条件を解説
勤怠管理システム「リシテア」より勤怠管理・労務管理のお役立ち情報のご紹介です。
子の看護等休暇は、育児・介護休業法で定められた労働者が利用できる制度です。法改正により、2025年4月1日から取得要件や取得事由が拡大しました。改正内容を把握することで、よりスムーズな運用が可能になります。
この記事では、子の看護等休暇の概要や法改正の内容、運用上の注意点について、わかりやすく解説します。
関連記事:【2025年4月・10月施行】育児・介護休業法とは?改正ポイントや求められる企業の対応を解説
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目次
子の看護等休暇とは
子の看護等休暇は、育児・介護休業法に定められた、子どもを養育する労働者のための休暇制度です。育児・介護休業法は、育児や介護に携わる労働者が仕事と家庭を両立できるよう支援することを目的としています。この法律では、子の看護等休暇以外にも育児休業や介護休業などが規定されています。
子の看護等休暇は、子どもが病気やけがをした場合など、子の世話をする必要があるときに取得できる休暇です。年次有給休暇とは別に取得が可能で、労働者が子育てをしながら働き続けられるための権利として位置づけられています。
出典:厚生労働省Ⅳ 子の看護等休暇制度 (第16条の2)*1
介護休業との違い
子の看護等休暇と介護休業は、両方とも育児・介護休業法に定められた労働者の権利ですが、目的や取得要件などに違いがあります。主な違いは以下のとおりです。
| 項目 | 子の看護休暇 | 介護休暇 |
|---|---|---|
| 目的 | 子どもの病気やけがなど、子どもの世話のために幅広く使える休暇 | 介護のための準備期間として利用する休業 |
| 対象 | 小学校3年生修了までの子* | 要介護状態の家族(子ども以外も含む) |
| 取得日数 | 子1人につき5日(最大10日) | 対象家族1人につき3回まで通算して93日を限度 |
| 要件 | 病気やけが、予防接種・健康診断、感染症による学級閉鎖、入園(入学)式・卒園式* | 介護対象となる家族が要介護状態であること |
| 特徴 | 要件が幅広い | 要介護状態にある家族への対応に限定される |
*※2025年4月1日より範囲および取得事由が拡大しました。
子の看護等休暇は、1日前後の短期間で行う子どもの世話を想定した休暇である一方、介護休業は家族の介護準備を目的として一定期間取得することを想定しています。このように、それぞれ異なるニーズに対応した制度となっています。
子の看護等休暇の法改正
子の看護等休暇は近年、法改正によって取得要件や適用範囲が見直されています。ここでは、2021年と2025年の法改正について確認します。
【2021年法改正】時間単位の取得
2021年1月1日から、子の看護等休暇は時間単位で取得できるようになりました。この改正により、労働者は柔軟に休暇を利用できるようになっています。通常、年次有給休暇の場合には時間単位で取得するために労使協定が必要ですが、子の看護等休暇については労使協定がなくても時間単位で取得可能です。
時間単位で取得する場合、何時間分の休暇を取得すると1日分に当たるかが重要なポイントになります。子の看護等休暇を取得する労働者の「1日分」に相当する時間数は、その労働者の1日の所定労働時間によって決まります。ただし、1時間に満たない端数がある場合には、その端数を時間単位に切り上げて計算する必要があります。例えば、所定労働時間が7時間30分の場合、30分の端数を切り上げて8時間分の休暇が「1日」として計算されます。
さらに、この法改正では、1日の所定労働時間が4時間以下である労働者を対象外とする除外規定が撤廃されました。この変更により、多くの労働者が子の看護等休暇を利用できるようになり、より幅広い層の労働者がこの制度を活用できるようになっています。
出展:厚生労働省(子の看護休暇・介護休暇が 時間単位で取得できるようになります)*1
出展:厚生労働省(別添 子の看護休暇・介護休暇の時間単位での取得に関するQ&A <取得単位について>)*1
【2025年法改正】対象となる子の範囲の延長など
2025年4月1日以降、子の看護等休暇は以下のとおり大幅に変更されました。
-
名称の変更:「子の看護休暇」から「子の看護等休暇」へ変更
-
対象となる子の範囲の拡大:小学校3年生修了まで
-
取得事由の拡大:感染症に伴う学級閉鎖等、入園(入学)式や卒園式が追加
-
労使協定により取得対象から除外できる労働者の範囲の制限:継続雇用期間6カ月未満の労働者を除外規定から撤廃
1の名称変更は、3の取得事由の拡大によるものです。看護以外の事由が取得事由に追加されるため、「等」が付きました。2から4の変更について、次章以降で詳しく確認します。
出展:厚生労働省(育児・介護休業法 改正ポイントのご案内)*1
子の看護等休暇の対象者
2025年の法改正により、従来は小学校就学前までだった子どもの対象範囲が、9歳に達する日以後の最初の3月31日まで、つまり小学校3年生修了前までに拡大されました。これにより、小学校低学年時にも柔軟に休暇を取得できるようになり、仕事と育児の両立がさらに支援されます。
また、対象となる労働者は正社員に限らず、有期契約社員やパートタイム労働者、アルバイトも含まれます。特に重要なのは、「正社員でない」という理由だけで子の看護等休暇を認めない取り扱いは無効とされている点です。企業側には法令遵守が求められるため、この点には十分注意する必要があります。
子の看護等休暇を取得できない労働者
子の看護等休暇を取得できない労働者として、日々雇い入れられる労働者が挙げられます。日々雇い入れられる労働者とは、その名のとおり1日単位で雇用契約を結ぶ労働者を指します。具体例としては、単発で働く土木作業員や、1日単位のアルバイトなどが該当します。
また、労使協定で定めた場合、1週間の所定労働時間が2日以下の労働者も子の看護等休暇を取得できる対象から除外することが可能です。
法改正に伴う対象者の変更点
2025年4月1日の法改正により、労使協定で子の看護等休暇を取得できる労働者から除外できる範囲が以下のとおり変更になりました。
| 従来 | 法改正後 | |
|---|---|---|
| 除外規定1 | 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者 | 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者 ※変更なし |
| 除外規定2 | 継続して雇用された期間が6カ月に満たない労働者 | (撤廃) |
つまり、継続雇用期間に基づく除外規定が撤廃され、除外できるのは1週間の所定労働時間が2日以下の労働者のみとなりました。
子の看護等休暇の取得事由
子の看護等休暇は、負傷または疾病にかかった子どもの世話、または疾病の予防を図るために必要な世話を行う労働者が取得できます。負傷や疾病の種類に制限はなく、子どもの世話に関するものであれば幅広く認められます。例えば、風邪による発熱などの突発的な体調不良だけでなく、ぜんそくなどの慢性疾患も対象です。
また、「疾病の予防」とは、子どもに予防接種や健康診断を受けさせることを指します。予防接種については、予防接種法に定められた定期接種だけでなく、インフルエンザ予防接種なども対象となります。
法改正に伴う取得事由の追加
2025年4月1日の法改正により、新たに以下2つの取得事由が追加されます。
- 感染症に伴う学級閉鎖等
- 入園(入学)式、卒園式の参列
感染症による学級閉鎖等とは、学校保健安全法に基づく学校の休業や出席停止、さらに保育所などの施設・事業におけるこれらと同様の措置を指します。具体的には、インフルエンザや麻しん、新型コロナウイルスなど感染症による臨時休業や出席停止が該当します。
入園(入学)式、卒園式への参列とは、子どもの教育または保育に関わる行事として厚生労働省令で定められたものが対象です。これには入園式・卒園式・入学式が含まれます。ただし、授業参観や運動会などは対象外とされています。
これらの変更により、子どもの看護以外にも柔軟な対応が可能となり、多様な家庭状況への配慮が進みます。
子の看護等休暇の取得日数
子の看護等休暇の取得日数は、以下のとおりです。
| 対象の子どもの人数 | 取得日数(1年度当たり) |
|---|---|
| 1人 | 5日 |
| 2人以上 | 10日 |
取得日数は10日が上限となります。対象となる子どもが3人いた場合でも、15日にはなりません。ただし、企業の判断で10日より多い日数の取得を企業独自に認めることは可能です。
1年度の始期と終期は、企業の判断で自由に定められます。定めを設けない場合は、毎年4月1日から3月31日までの1年間となります。
子の看護等休暇の取得日数は、年次有給休暇とは分けて管理する点に注意しましょう。年次有給休暇の時間単位取得を認めていない企業の場合、子の看護等休暇の運用のために、時間単位の休暇の管理方法を新たに検討しなければならないケースもあります。
子の看護等休暇は有給か?無給か?
子の看護等休暇を取得した期間は、法律上、無給でも構いません。ただし、企業の判断で有給扱いにすることも可能です。有給にするか無給にするかを決める際の注意点について解説します。
有給・無給の取り扱いは就業規則に定める
子の看護等休暇を取得した期間の賃金の取り扱いを定める場合、「無給とする」「有給とする」と記載するだけでは不十分です。特に無給とする場合には、どの程度賃金が控除されるのかを明確に定める必要があります。
-
有給とする場合の規定例
「子の看護等休暇を取得した期間については、通常の勤務をしているものとみなす」
-
無給とする場合の規定例
「子の看護等休暇を取得した期間については、給与規定に基づき、労務提供のなかった時間分に相当する額を控除した額を支給する」
無給とする場合でも、賃金控除は労務提供がなかった時間分のみとなります。例えば、子の看護等休暇を3時間取得した労働者から4時間分以上控除すると法律違反となります。
また、賞与や昇給などについても取り扱いを明確にしておく必要があります。例えば、「賞与算定期間中に子の看護等休暇を取得した場合、その時間分を控除対象とする」など具体的なルールを就業規則に記載しましょう。
出展:厚生労働省(1 育児・介護休業、子の看護休暇)*1
子の看護等休暇制度導入の流れ
子の看護等休暇制度を導入する流れは、以下のとおりです。
- 就業規則を定める
- 労働者の申請方法を決める
- 労働者に周知する
それぞれのポイントについて解説します。
就業規則を定める
子の看護等休暇は育児・介護休業法で認められた労働者の権利であり、就業規則に定めがなくても取得できます。ただし、厚生労働省の指針において、子の看護等休暇については就業規則に定めるべきとされています。
就業規則に定める場合、以下の項目が必要です。
- 休暇に関する事項
- -取得できる労働者の範囲*
- -取得できる日数
- -1年の期間
- -取得できる事由*
- 取得に必要な手続き
- 休暇中の賃金の支払の有無
- 賞与や昇給などにおける取り扱い など
*法改正により2025年4月1日から変更がある事項
また、労使協定で除外規定を設けている場合は、その内容も更新する必要があります。厚生労働省ウェブサイトには「育児・介護休業等に関する規則例」や「指針」が掲載されているため参考にしてください。
出展:厚生労働省(育児・介護休業等に関する規則の規定例)*1
出展:厚生労働省(子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が 図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針)*1
労働者の申請方法を決める
子の看護等休暇の申請方法について法律上特段の定めはありません。申請書類による書面提出や口頭申請など、企業ごとに柔軟な対応が可能です。ただし、子どもの急な発熱など突発的なケースでは電話やメールで連絡し、申請書類は事後提出とするなど労働者が利用しやすい仕組みを整えましょう。
「申請書類が事前に提出されていないため当日の子の看護等休暇取得を認めない」という取り扱いは禁止されています。また、診断書など証明書類の提出を求める場合でも事後の提出も認めるなど労働者へ過剰な負担にならないよう配慮する必要があります。
労働者に周知する
就業規則への記載や申請方法が整備されたら、労務管理者から改正内容や制度概要について労働者へ周知しましょう。周知方法には以下があります。
- 説明会の開催
- 案内資料の配布
- メールでの周知
子の看護等休暇について案内資料を作成し、説明会やメールで周知しましょう。説明会を開催することで質疑応答も行いやすく、案内資料を配布すれば家に持ち帰って家族と一緒に確認できるでしょう。また、案内資料を企業内のイントラネットなどに保存する場合、メール文面にも保存場所を記載すると良いでしょう。
さらに、本人または配偶者が妊娠・出産した際には育児休業制度と併せて個別周知することで理解促進につながります。この際には厚生労働省が公表している資料「参考様式 仕事と育児の両立を進めよう!」を活用してください。
出典:厚生労働省(参考様式 仕事と育児の両立を進めよう!)*1
子の看護等休暇における注意点
子の看護等休暇は、ルールを定めて周知するだけで終わりではありません。企業ごとの事情に合わせ、適切に運用することが必要です。子の看護等休暇を運用するうえで、押さえておきたい注意点を2つご紹介します。
不利益な取り扱いの禁止
育児・介護休業法では、子の看護等休暇の取得を理由とする不利益な取り扱いを禁止しています。主な不利益取り扱いは以下のとおりです。
- 取得を理由とする解雇や契約更新拒否
- 賃金の減額など、労働契約の内容変更
- 取得期間を超えた賃金の減額
- 取得を理由とした降格処分 など
特に取得期間を超えた賃金の減額には注意が必要です。賃金計算が複雑で休暇取得期間の計算ミスが起こりやすいためです。子の看護等休暇を取得した期間は無給でも構いませんが、その期間を超えた賃金控除は法律違反となります。計算を誤った結果、賃金を控除しすぎた場合も法律違反となるため、休暇取得期間を正確に把握し、適切な控除額を慎重に計算することが重要です。
出展:厚生労働省(不利益取扱いの禁止について)*1
年次有給休暇との併用における注意点
子の看護等休暇は、労働基準法の年次有給休暇とは分けて管理する必要があります。ただし、午前は子の看護等休暇を取得し、午後は年次有給休暇を取得するなどの使い方は問題ありません。
また、子の看護等休暇と年次有給休暇のどちらか一方を優先して使用することを企業側では指定できません。子どもの発熱を看病する場合に年次有給休暇を取得することも、年次有給休暇が余っている場合に子の看護等休暇を取得することも、要件を満たす限りは労働者の自由です。
さらに、子の看護等休暇には年次有給休暇で認められている時季変更権がありません。時季変更権とは、事業の正常な運営に支障がある場合に休暇の取得時期の変更を命じることができる使用者側の権利です。子の看護等休暇の場合、たとえ事業運営に支障がある場合でも、休暇の取得時期の変更は命じられません。
法改正に伴う勤怠管理への影響
子の看護等休暇は、今回の法改正で取得事由や対象となる子どもの範囲が拡大し、労働者にとって利用しやすい制度となりました。一方、企業側は制度の複雑化に対応し、適切な運用を求められます。特に時間単位での休暇管理は手間がかかり、ミスが発生しやすいため、労務管理者への負担が増加する可能性があります。
こうした複雑化する子の看護等休暇への対応には、制度に対応できる勤怠管理システムの活用が有効です。クラウド型システムを導入すれば、スマートフォンやタブレットからも利用できるため、労働者は職場外からでも迅速に休暇申請を行うことが可能ですし、将来の法改正もクラウド事業者側で対応可能なため柔軟に対応できます。
また、クラウド型システムであれば、システムの更新や運用に時間を取られることなく、制度運用方法の検討や労働者への周知といった重要な業務に集中できるでしょう。
まとめ
育児・介護休業法は近年改正が進み、2025年4月には子の看護等休暇も対象範囲や取得事由が拡大します。これにより労働者にとって利用しやすくなる一方、労務管理者には運用面での負担が増える可能性があります。
年次有給休暇や企業独自の特別休暇など、多様な休暇管理に対応できる勤怠管理システムを活用することで、こうした負担を軽減できます。システム選定でお困りの場合は、ぜひお気軽に当社まで お問い合わせください。
【*1】本記事は法令や官公庁公表の情報をわかりやすく解説するためのものであり、すべての詳細や例外を網羅しているわけではありません。各法令や公表されている情報の正確な内容については、出典に掲示されているリンク先をご参照ください。
記事公開日:2025年7月9日
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