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コラム

テレワークで生産性は下がるのか?正しく対処して生産性を上げる方法

テレワークで生産性は下がるのか?正しく対処して生産性を上げる方法

働き方改革の推進や新型コロナウイルスのまん延により、テレワークを採用する企業はかなり多くなり、労働者にとっては、働き方の選択肢が広がりました。しかし、実際にテレワークをしてみたことで見えてきた課題もあります。それは「生産性の低下」です。企業としては、働き方改革を行うことによって生産性を向上させようとしているにもかかわらず、逆に生産性が低下してしまうのは見過ごせない問題です。ここでは、テレワークの基礎知識から、生産性低下の原因や対策までをご紹介します。今現在テレワークを導入しているが、うまくいっていないと感じている企業の方は、これを参考にしながら見直してみてください。

テレワークの種類

在宅勤務

在宅勤務とは、オフィスに出社することなく自宅で業務を行う勤務形態です。メールやチャット、電話、Web会議ツールなどを使用しながら、遠隔で就業します。現在はインターネットが普及したことにより、より在宅勤務がしやすくなり、これを導入する企業も増えてきています。「1週間のうちに3日まで在宅勤務ができる」といったかたちで、在宅勤務を採用している企業もあります。

モバイルワーク

モバイルワークとは、飛行機や電車など移動中に仕事をしたり、移動先のホテルやカフェで仕事をしたりと、場所を変えながら業務を行う勤務形態です。屋外でもインターネットが使える環境が整ってきたことや、モバイルパソコンやタブレット、スマートフォンなどの持ち歩ける端末が増えたことで、広く普及しています。営業職や出張が多い職種に適した勤務形態です。

サテライトオフィス勤務

サテライトオフィス勤務とは、会社で契約するサテライトオフィスやコワーキングスペースなど、本社や支社、営業所ではない場所に行って業務を行う勤務形態です。複数の人が共用するワークスペースを貸し出すシェアオフィスサービスを企業が契約し、そこで社員に仕事をしてもらっているケースが多いです。

テレワークを行ううえで注意すべき生産性

新型コロナの影響もあり、テレワークが社会に広く普及しました。時間や場所に縛られることなく仕事ができるようになり、従来よりも働き方の選択肢が増え、働きやすい環境が整ってきていると言えます。特に在宅勤務であれば、通勤にかかる時間を有効活用することができるというメリットもあります。
しかし、その一方で企業として懸念されるのが、テレワークによって生産性が低下する可能性があるということです。

  • 日本の労働者と企業に対し、職場勤務と比較した在宅勤務の生産性を問うたところ、「在宅勤務の方が生産性が低い」と回答した割合は、労働者82.0%、企業の92.3%
  • 「在宅勤務の方が生産性が高い」と回答した割合は、労働者では3.9%、企業では1.2%に留まる。

令和3年2月17日の成長戦略会議(第7回)配付資料「コロナ禍の経済への影響に関する基礎データ」(内閣官房 成長戦略会議事務局作成)より抜粋
出典:内閣官房ホームページ

上記資料は、在宅勤務に限ったアンケート調査ではありますが、労働者自身の実感として、80%を超える人が生産性の低下を感じており、その数値の高さに注目すべきでしょう。本来であればテレワークをすることで無駄な時間が削減され、業務効率化が進み、生産性が向上することが期待できたはずです。にもかかわらず、逆に生産性が低下していると感じている人が大多数を占めてしまっています。働き方改革を進める企業にとって、この課題は非常に重要であり、どのように解決するのかを考える必要があります。

なぜテレワークで生産性が下がるのか?

生産性の低下は、企業の収益に直結する問題です。企業としては、生産性が下がる理由を正確に把握することが不可欠です。ここからは、テレワークの生産性が下がる理由を4つ紹介します。

長時間労働の増加

テレワークで生産性が下がる理由としてまず挙げられるのは、労働時間が長くなってしまっていることです。特に在宅勤務であれば、仕事とプライベートを明確に切り分けるのが難しくなり、家の用事をしながらパソコンを開いて延々と仕事をしているうちに、長時間労働になってしまいがちです。

「仕事とプライベートの時間の区別がつかなくなること」では「あった」が 71.2%、「勤務時間の間に定められた休憩時間がきちんととれないこと」では 53.6%となりました。
「通常の勤務(出勤しての勤務)よりも長時間労働になること」では 51.5%となりました。
「残業代支払いの対象となる時間外・休日労働をしたにも関わらず申告しないこと」があったか聞いたところ、「あった」と回答した人の割合は 65.1%となりました。

日本労働組合総連合会「テレワークに関する調査2020」より一部抜粋

このように長時間労働になったと回答した人が半数以上あり、さらに休日勤務や時間外労働をしたにもかかわらず、申告をしない「隠れ残業」の問題も発生。企業側が知らないところでも長時間労働が増加しています。

働く環境が整備されていない

インターネットが普及し、回線の質も上がっているとは言え、業務を円滑に行うための環境が整備されたオフィスに比べて、自宅の通信環境が劣ってしまうという場合があります。また、業務に適したデスクや椅子が自宅にはないといった設備の問題もあり、自宅で集中して業務を行うのは難しいというのが現状です。

テレワークをスムーズに行うためには、どのような課題があると感じているか、複数回答で質問した(いくつでも選択可)。第1回調査から一貫して「部屋、机、椅子、照明など物理的環境の整備」「Wi-Fiなど、通信環境の整備」といった、自宅の環境整備に係る項目を4割前後のテレワーカーが課題として挙げており、2021年10月調査においてもこの傾向に変化は無い。

公益財団法人 日本生産性本部 「第7回 働く人の意識に関する調査」より抜粋

また、上記のほかにも、押印のためだけに出社が必要になるといったケースもあり、テレワークを円滑に行うための環境がまだ十分に整っていないことが、生産性低下を招く一因になっています。

コミュニケーション不足

オフィス勤務であれば、同じ部署、隣の席にいる人などに気軽に相談をしたり、業務に関係ない会話をしたり、いつでもコミュニケーションが取れます。しかし、テレワークの場合には、顔を見ながら会話をする際にはWeb会議ツールなどを使う必要があります。そのため、基本的には事前に時間を決めておく必要があり、いつでも気軽に相談ができるわけではありません。
また、多くの企業ではコミュニケーション不足を補うために、チャットツールでのコミュニケーションが増えています。しかし、相手の表情が見えないため、対面よりも意思疎通は難しくなります。対面であれば簡単に伝わることでも、文字だけではなかなか伝わりにくいニュアンスもあります。さらに、返事を待つまでの時間が発生してしまい、スムーズさも欠いてしまいます。そのことがストレスに感じる人もいるでしょう。
こういったことが原因となり、情報共有の頻度や質が下がり、生産性の低下につながってしまうのです。

モチベーションの低下

テレワークの場合、社員がそれぞれ自宅やサテライトオフィスなど、別々の場所で就業するため、基本的には一人で業務を行うことになります。オフィス勤務と比べると、周囲の目がないため緊張感がなくなり、仕事に集中できなくなる可能性があります。また、職場の仲間と一緒に働いていることを実感しにくくなります。オフィス勤務であれば、それぞれが担当している業務がどれくらい進んでいるのかを肌で感じることができ、それが刺激になることもあります。うまく進んでいない同僚がいれば、周囲がフォローをすることで、チームとしての結束力が高まることもあります。しかし、テレワークではそういったことが起こりにくくなります。さらに、自分の業務が会社に貢献できているのか、自分の仕事ぶりを上司が評価してくれているのかどうかが分からず、やりがいを感じにくくなってしまいます。そのため、少しずつモチベーションが低下していき、生産性の低下を招いてしまいます。

テレワークにおける生産性低下の対策

上記のとおり、テレワークによって生産性が低下する理由は、さまざまですが、対策をすることは可能です。ここからは具体的な対策方法を3つ紹介します。これを参考に、生産性低下を防ぎつつ、真に働きやすい環境をつくるためのテレワークを実践しましょう。

意識的にコミュニケーションの機会を増やす

上記のとおり、テレワークでは、コミュニケーション不足になりがちなので、意識的にコミュニケーションを増やすことが大切です。
業務遂行に直接的に関わる会議をするだけではなく、同僚やプロジェクトチームのメンバー同士が気軽に話せるような雑談の場、オンラインランチ会、オンライン飲み会を定期的に開催しましょう。物理的に離れていれても、会社に帰属している意識やチームとの一体感を持って、日々の業務を行うことができます。
また、同じ部署やチーム内で朝礼や終礼などをオンラインで行うことも有効だと考えられます。情報共有の場が増えるほか、1日の流れの中でメリハリが生まれて、長時間労働になりにくくなります。

労務管理や評価制度を見直す

テレワークの労務管理を行う方法のひとつとして、オンライン出退勤管理システムの導入があります。フレックスタイム制や時短勤務といった柔軟な働き方に対応しているもの、パソコンのログイン情報と出退勤時間をひもづけるもの、勤務時間内にそれぞれの社員がどんな作業をしていたかを記録できる機能があるものなど、ただ自己申告で勤務時間を記録するだけではない充実したシステムもあるため、それらを検討してみるのも良いでしょう。 また、それぞれの社員の仕事への取り組み姿勢が見えにくいという課題に対応するためには、成果物重視に変更するなど、定性的ではなく、定量的な目標を明確に設定。客観的に評価する仕組みに変えることで、モチベーションの低下を防ぎやすくなります。

関連情報:コラム「テレワークの課題を解決する「就業管理方法」とは?」

ITツールを導入する

前項の出退勤管理システム以外にも、テレワークに役立つさまざまなシステムやITツールがあります。多くの企業で導入されているのが、メールよりも手軽に連絡が取れるビジネスチャットツールや、遠隔地にいながらでも顔を見ながら話せるWeb会議ツール、データ共有のためのオンラインストレージです。これらは業界業種問わずに必須のツールと言っても良いでしょう。これら以外にも、ワークフロー承認システムや新人研修システムなどがあり、業務内容によっては、導入を検討してみる価値はあると思います。
その他、営業支援システムやMA(マーケティングオートメーション)ツール、電子契約サービスなど、業務効率化につながるITツールを導入することは、テレワークはもちろん、従来のオフィス勤務に戻った場合でも、企業としての競争力強化につながります。

まとめ

働き方改革を進めるうえでテレワークは欠かせない要素です。ここで紹介したテレワークで生産性が下がってしまう理由と対応策を参考にしながら、柔軟な働き方に対応することで、人手不足の社会でも人材を確保できる環境、および生産性を向上させられる組織づくりを推進していきましょう。
また、ITツール導入の際には、そのツールをより効果的に活用できるように、サポートが充実しているベンダーを選ぶのもおすすめです。

関連情報:ワークスタイル変革ソリューションコンセプト

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