Sustainability Dialogue

従業員がリードする、 タウンホールミーティング ― 対話が深めるボトムアップカルチャー ―

AIをはじめとする技術革新や社会環境の変化が加速するなか、企業にはトップダウンだけではなく、一人ひとりの従業員が主体的に考え、行動する力が求められています。当社では、そうしたボトムアップカルチャーを育む取り組みとして、2022年からタウンホールミーティングを実施しています。その対話をリードするのが、手挙げ制で従業員から選ばれたファシリテーターです。いまなぜ、経営層と従業員の双方向コミュニケーションが求められているのか。そこでの議論が、どのような変化を生んでいるのか。そしてそれをさらなる挑戦へとつなげていくために——。タウンホールミーティングを運営する労政部のメンバーと、実際にファシリテーターを務めた二人の従業員とともに、対話を通じて生まれる気づきやつながりが、一人ひとりの挑戦をどのように後押ししているのかを探っていきます。

タウンホールミーティングについて語る岩沼竜平、廣塚源太、竹長はるな
岩沼竜平

人事総務本部
労政部 労政グループ
部長代理

岩沼 竜平

廣塚源太

スマートライフソリューション事業部
ライフイノベーション本部
ソーシャルサービス部 第1グループ
主任技師

廣塚 源太

竹長はるな

スマートライフソリューション事業部
スマートワークソリューション本部
HRソリューション部 第1グループ

竹長 はるな

タウンホールミーティングについて語る岩沼竜平

変化の激しい時代だからこそ、 自律性を引き出すコミュニケーションを

タウンホールミーティングという双方向コミュニケーションの場を設けるようになった背景を教えてください。

岩沼:近年、企業を取り巻く外部環境は目まぐるしい変化を続けています。それに追いついていくために、何よりも求められるのが従業員の自律性です。ところが従来のトップダウンのコミュニケーションでは、どうしても「経営陣が示した方針に、従業員がついていく」というかたちになってしまいます。また、現場の従業員が抱える課題感を素早くキャッチアップし、それを次の施策へと生かしていける仕組みの構築も求められていました。

そこで当社では経営層と従業員が双方向で対話する場として、2022年からオンラインと対面のハイブリッド形式で全従業員が参加できるタウンホールミーティングを開催しています。特徴的なのは、対話をリードするファシリテーターを従業員の手挙げ制にしていることです。ファシリテーターとなった従業員が示す自ら思考し行動する姿は、多くの従業員にポジティブな影響をあたえていくと考えています。そして、従業員同士が刺激を受け合いながら、会社づくりに主体的に関わる文化が育まれていることは、まさに当社らしさの一つです。

実際にファシリテーターを担ったおふたりは、どのような思いから手を挙げられたのでしょうか?

竹長:まずはシンプルな好奇心です。私は前職がスタートアップで、規模は小さいながらも経営に携わっていました。そこから1年ほど前に、当社に転職してきて、大きな組織のトップが考えていることに純粋な興味がありました。この会社はどんな未来をめざし、そのためにどんな戦略を描いているのか。日常業務だけでは見えにくい経営層の考えや会社のこれからの方向性を、経営幹部に直接伺ってみたいと思ったことが、手を挙げたきっかけでした。

廣塚:私はこれまでに二度、ファシリテーターを務めています。初回は本当に、軽い気持ちでした。ただ、これまでもコーポレートフィロソフィーの策定に向けたワークショップに参加したり、社内のイベントには積極的に参加するタイプだったと思います。みんなでひとつのものをつくる、という営み自体が好きなんです。だから、みんなでシステムを構築するSEを仕事に選びましたし、社内コミュニティを立ち上げたりもしてきました。そうした取り組みを通じて実感したのは、まずは自分たちが楽しみながら、多くの人が協創できる場をつくっていくことが、サステナブルな社会をつくる近道だということです。ファシリテーターに手を挙げたのも、根本にはそんな思いがあったのかもしれません。

タウンホールミーティングについて語る竹長はるな

自分たちで会社をつくっている。 そんな実感が得られる対話の場に

当日、ファシリテーターとして意識していたことはありますか?

竹長:心がけていたのは、経営幹部のリアルな本音を引き出すことです。用意していた質問だけでなく、経営幹部の経歴も踏まえながらアドリブでの問いかけを交えることも意識しました。

廣塚:私はとにかく、参加者の皆さんから寄せられるチャットでのコメントを盛り上げることに徹していました。やはり誰かが意識的にリードしないと、たとえチャットでもなかなか質問はしづらいものです。だからこそ、まずは自分自身がどんどん書き込む。一方で、チャットでやや厳しめの質問があれば、少し噛み砕いたうえで、私からあらためて経営幹部に質問するようにしていました。

そういう意味では、経営幹部にとっては難しい試みでもあると思っています。生配信なので発言を取り消すこともできない。それでも時には熟考しながら、一つひとつ言葉を紡いでいく姿が印象的でした。

岩沼:チャットの重要性は、私も実感しています。最近では、経営幹部から画面の向こうの参加者に質問を投げかける場面も増えてきました。そうすると、チャットでさまざまな返答があり、さらに経営幹部からのリアクションが生まれていく。ファシリテーターを起点として、そうしたインタラクティブな対話の場が生まれるDNAがあることを、運営としても嬉しく思っています。

タウンホールミーティングによって、どのような変化が生まれていると感じていますか?

岩沼:会社としてのわかりやすい変化は、タウンホールミーティングでの議論をきっかけとして、従業員の交流スペースが生まれたことだと思います。リモートワークが普及し出社率が下がり、社員食堂がなくなったことに対して、タウンホールミーティングのある回のなかで、従業員から「出社時の昼食が不便だ」という意見が上がりました。そんな声に対して、当時の社長が「では検討してみましょう」と応じ、それがきっかけで設けられたのが売店を併設した交流スペースです。従業員の声から会社が動いた、象徴的な事例ですね。

廣塚:私自身の変化になってしまうのですが、ファシリテーターを務めたことで、「自分たちの居場所を良くするのは、自分たちだ」という思いが、いままで以上に強くなりました。これは自戒を込めていうのですが、人はどうしても思ったように仕事ができないことを会社のせいにしてしまいがちです。けれど、組織をかたちづくっているのは、経営層だけではなく、私たち従業員一人ひとりでもある。だからこそ、それぞれがそれぞれの立場で全力を尽くすことが、より良い会社をつくることにつながるのだと改めて実感しました。

竹長:私はタウンホールミーティングをきっかけに、「もっと会社を知りたい」「もっといろいろな人と話してみたい」という気持ちが強くなりました。社内のワーキンググループに参加してみたり、若手で飲み会を企画したり、ちょっと立ち話をしてみたりと、自分から人とのつながりをつくるようになりました。多様な事業規模の大きな会社なのだから、もっとたくさんの人と関わってみよう、会社の未来についても考え続けていこうと。それが一番の変化かもしれません。

一人ひとりの挑戦を支える組織について語る登壇者

組織としての「余白」が、 一人ひとりの挑戦を後押ししていく

そもそもタウンホールミーティングのような取り組みの土台となる、日立ソリューションズの「風通しの良さ」はどこから来ていると感じていますか?

竹長:入社してみて何より驚いたのが、さまざまな公募制度が用意されていることでした。自分から、社内の募集ポジションに応募して、要件を満たせば異動して新たな仕事に挑戦できます。ここまでキャリア選択の自由度が高い会社は、なかなか珍しいはずです。例えば、新卒3年目の時点で、いまの部署に残るのか、異動するのかを自分の意思で決定する機会があり、「異動しない」という選択肢を選んだとしても、それを自己決定するというプロセスを経ています。「自分のキャリアは自分で築いていくものだ」という意識になり、働きがいを見つけられる環境になっていると考えています。現在の部署にも、別部署から異動された方もいますし、それが結果的に風通しの良さにつながっているのではないでしょうか。

廣塚:「誠実さと透明性」が組織風土のDNAにあることも大きいと感じています。たとえば、当社はIT業界のなかで、いち早く働き方改革に真正面から向き合った企業のひとつだと考えています。そこでの試行錯誤も含めて、組織の課題に誠実に向き合ってきたことが、コミュニケーションの土台となる心理的安全性の確保につながっているのだと思います。

岩沼:そもそも当社は、合併や事業移管を経験してきた会社です。その過程では、きっと対立や失敗もあったのだと思います。けれど、生き残っていくためには、それぞれ異なるカルチャーを受け入れ、多様性のある開かれた組織をつくっていくほかなかったのではないでしょうか。会社としての過渡期を乗り切った先人たちの知恵が、現在の当社の強みである風通しの良さやボトムアップカルチャーとして引き継がれているのだと感じています。

そうした強みを、従業員一人ひとりの挑戦にどのようにつなげていきたいとお考えですか?

岩沼:当社は日立グループの中でも、自走することのできる従業員が多く、スピーディかつアジャイルに動ける組織であることが特徴です。従業員がいざ動き出したときに、スムーズに前に進めるよう、社内制度や職場環境を整えておくことが、私たち労政部の役割です。一方で、周囲を気にして手を挙げにくい若手の従業員には、ある程度こちらから背中を押してあげることも必要になるでしょう。

それらを両立するためには、より細やかなコミュニケーション施策が必要不可欠です。簡単なことではありませんが、それこそが私たち自身の挑戦でもあると感じています。

廣塚:動き出した時の障がいを取り除くということは、言い換えれば「余白」をつくるということでもあるのではないでしょうか。その点、当社には業務時間の5%を、社内コミュニティ活動や勉強会などにあてて良いというルールがあります。実際に私自身も、このルールを活用して、仲間たちと新たな技術を試したりしてきました。SXの実現につながる挑戦も、こうした余白から生まれてくるのではないかと予感しています。

竹長:実のところ私は、当社がこんなにも「余白」のある会社だとは、入社以前はまったく予想していませんでした。だからこそ、まずはエンジニアとしてしっかり成長しながら、この環境を生かしてさまざまな人や取り組みに関わっていきたいと感じています。挑戦というには大げさかもしれませんが、その一歩を踏み出していくことが、いまの私の目標です。

座談会を終えた岩沼竜平、廣塚源太、竹長はるな