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セキュリティコラム
WAAPとは?WAFとの違い・主な機能・
導入メリット・選定ポイントをわかりやすく解説

WAAP(Web Application and API Protection)とは、WebアプリケーションとAPI(Application Programming Interface)をサイバー攻撃から包括的に保護するためのセキュリティ対策です。
WAF(Web Application Firewall)を中心に、APIセキュリティ、Bot対策、DDoS対策などを統合し、Webサービス全体を多層的に守る考え方として注目されています。
近年、クラウド利用の拡大、APIを介したサービス連携の増加、悪性Botによる自動化攻撃の高度化などにより、従来のWAFだけでは対応が難しい脅威が増えています。Webアプリケーションだけでなく、APIまで含めて防御することが、現代のWebサービス運営には欠かせません。
本記事では、WAAPの基本、WAFとの違い、主な機能、導入メリット、選定ポイント、導入時によくある課題や失敗例までを、実務担当者の視点でわかりやすく解説します。
1. WAAPとは
WAAPは、Web Application and API Protectionの略称で、WebアプリケーションとAPIを包括的に保護するためのセキュリティ対策です。
従来のWAFは、主にWebアプリケーションへの不正な通信を検知・遮断する役割を担ってきました。しかし、Webサービスの構造が変化し、APIを介した通信が増えたことで、Web画面だけを守るだけでは十分ではなくなっています。WAAPは、WAFの考え方を拡張し、APIセキュリティ、Bot対策、DDoS対策などを統合的に扱います。
つまりWAAPは、単にWAFを高機能化したものではなく、クラウドやAPI連携が前提となった現代のWebサービス環境に適した包括的なセキュリティ基盤といえます。Webアプリケーションだけでなく、API経由のデータ連携、自動化されたBotによるアクセス、サービス停止を狙うDDoS攻撃まで、より広い範囲を対象とします。
WAAPは特定の1製品を指す言葉ではなく、複数のセキュリティ機能を組み合わせて実現するセキュリティコンセプトとして理解しておくと、選定や運用の判断がしやすくなります。
2. なぜ今WAAPが必要なのか
WAAPが必要とされる背景には、企業のWebサービス環境の大きな変化があります。
クラウド・SaaS利用の拡大
多くの企業がオンプレミス中心の構成から、クラウド・SaaS(Software as a Service)を組み合わせた構成へ移行しています。Webサービスや業務システムがインターネット経由で利用される機会が増えたことで、攻撃者から見た侵入口も広がっています。
さらに、複数のクラウドを組み合わせるマルチクラウド環境では、環境ごとにセキュリティ機能や運用ルールが異なるため、統一的なセキュリティ運用が難しくなる点も課題です。WAAPは、環境をまたいで共通したセキュリティ方針を適用しやすくする役割を果たします。
API連携の一般化とShadow APIリスク
スマートフォンアプリ、SaaS、マイクロサービス、外部サービス連携などでは、APIを介した通信が欠かせません。APIはサービスの利便性を高める一方で、認証・認可の設定不備や過剰なデータ公開があれば、情報漏洩や不正操作につながる可能性があります。
特に問題となるのが、管理者が把握していないAPI、いわゆるShadow APIです。国際的なセキュリティコミュニティであるOWASPが公開する「API Security Top 10 – 2023」では、把握・管理されていないAPIや廃止済みAPIの管理不備が「API9:2023 Improper Inventory Management」として主要リスクに位置づけられており、Shadow API対策の重要性が国際的にも認識されています。
Web画面からは見えないShadow APIは、従来のWebアプリケーション中心の対策では発見が難しく、攻撃者にとって格好の侵入経路となり得ます。
Botによる自動化攻撃の増加
悪性Botは、人間の操作を模倣して大量のログイン試行やスクレイピング、不正なフォーム投稿を行います。特に、流出したID・パスワードを使ってログインを試みるCredential Stuffingは、多くのWebサービスにとって深刻な脅威です。
Botによる攻撃は自動化されているため、通常のアクセスとの見分けが難しく、WAF単体では十分な対応が難しい場合があります。近年は、AIを活用してより人間らしい挙動を模倣するBotも登場しており、検知の難易度は年々高まっています。
DDoS攻撃の継続的な脅威
DDoS攻撃は、大量の通信を送りつけることでサービス停止や遅延を引き起こす攻撃です。ネットワーク帯域を圧迫する攻撃だけでなく、アプリケーション層の特定処理に負荷を集中させる高度な攻撃も見られます。
WebサービスやAPIが事業の中心を担う企業にとって、サービス停止は売上や信用に直接影響します。DDoS対策は、単発ではなく継続的な備えが求められる領域です。
このような背景から、WAFだけでなく、APIセキュリティ、Bot対策、DDoS対策を含めて多層的に守るWAAPの重要性が高まっています。
3. WAAPで防げる主な脅威
WAAPは、WebアプリケーションやAPIを狙う複数の脅威に対応します。特にWebアプリケーションを狙う攻撃は、OWASPが公開する「OWASP Top 10 – 2021」に代表的なリスクとしてまとめられており、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS:Cross-Site Scripting)を含む「A03:2021 Injection」や、Credential Stuffingを含む「A07:2021 Identification and Authentication Failures」などが継続的に主要リスクとして位置づけられています。
| 脅威 | 概要 |
|---|---|
| SQLインジェクション | データベースを不正に操作する攻撃 |
| クロスサイトスクリプティング(XSS) | ブラウザー上で悪意あるスクリプトを実行させる攻撃 |
| API攻撃 | 認証・認可不備や過剰なデータ取得を悪用する攻撃 |
| Bot攻撃 | 不正ログイン、スクレイピング、買い占めなど |
| Credential Stuffing | 流出したID・パスワードによる不正ログイン |
| DDoS攻撃 | 大量通信によるサービス停止・遅延 |
このような脅威に対して多層的な防御を提供するのがWAAPです。
4. WAAPを構成する主な機能
WAAPを実現する製品・ソリューションは一般的に、以下の4つの機能で構成されます。
WAF
Webアプリケーションへの不正なリクエストを検知・遮断する機能です。SQLインジェクション、XSS、コマンドインジェクションなど、OWASP Top 10で挙げられる代表的な攻撃に対応します。
WAAPにおいてもWAFは中核機能ですが、単体ではAPI特有の認可不備やBotの自動化攻撃を十分に検知できないため、他機能との組み合わせが前提となります。
APIセキュリティ
APIに対する不正アクセスや悪用のリスクを低減するための機能です。OWASP「API Security Top 10 – 2023」では、認証・認可の不備、過剰なリソース消費、機微なビジネスフローの悪用、APIインベントリの管理不備などが主要なリスクとして整理されています。
APIセキュリティ製品・サービスで提供される機能は製品によって異なりますが、一般的な例として、次のようなものがあります。
- APIやエンドポイントの検出・可視化
- OpenAPIなどのAPI仕様と実際の通信の比較
- 認証・認可に関する異常の検知
- 不正または想定外のリクエストの検知・制御
- APIの利用状況やデータ公開範囲の可視化
- Shadow APIや古いAPIの発見を支援するインベントリ管理
APIはサービスの裏側で動くことが多く、利用状況を可視化できていない企業も少なくありません。WAAP導入時は、APIをどこまで可視化・保護できるかが重要な選定ポイントになります。
ただし、OWASP API Security Top 10への対応は、セキュリティ製品の導入だけで完結するものではありません。API設計、認証・認可の実装、開発時のテスト、インベントリ管理、運用監視を組み合わせる必要があります。
Bot対策
正規ユーザーと悪性Botを識別し、不正な自動アクセスを制御する機能です。アクセス頻度、操作パターン、端末情報、行動特性などを踏まえてBotを判定します。
重要なのは、すべてのBotを一律に遮断するのではなく、良性Botと悪性Botを見分けることです。検索エンジンのクローラーや正規の外部連携Botまで遮断すると、SEO(Search Engine Optimization)や業務に影響する場合があります。
DDoS対策
大量の不正通信からWebサービスやAPIを守る機能です。通信量ベースの対策だけでなく、リクエストの内容や挙動を踏まえた高度な制御が求められます。
WAAPでは、WAF、APIセキュリティ、Bot対策と組み合わせることで、単純な通信量だけでなく、リクエストの内容やアクセスパターン、振る舞いなどを分析した防御が可能になります。
5. WAFとの違い
WAFとWAAPの違いは、保護対象と防御範囲にあります。
| 項目 | WAF | WAAP |
|---|---|---|
| 主な保護対象 | Webアプリケーション | WebアプリケーションとAPI |
| 主な機能 | Web攻撃の検知・遮断 | WAF、API保護、Bot対策、DDoS対策 |
| API保護 | 限定的な場合がある | 主要な保護対象 |
| Bot対策 | 別機能になる場合がある | 統合的に対応 |
| DDoS対策 | 別製品が必要な場合がある | 統合的に対応できる場合がある |
| 向いている環境 | Web画面中心のシステム | API連携・クラウド・SaaS環境 |
WAFが向いているケース
- Web画面中心のシンプルな構成
- APIをほとんど公開していない
- 既存のWAF運用で十分に対応できている
WAAPが向いているケース
- APIを積極的に活用している
- EC(Electronic Commerce)、SaaS、会員サービスを運営している
- Bot攻撃やDDoS攻撃への懸念がある
- マルチクラウド環境で運用している
つまり、WAFが「Webアプリケーションを守る対策」であるのに対し、WAAPは「WebアプリケーションとAPIを包括的に守る対策」といえます。既存のWAFを置き換えるのではなく、WAAPの考え方を軸に、対策を再設計していく企業も増えています。
6. WAAP導入のメリットと有効な企業・システム
統合的な保護によるセキュリティ強化
WebアプリケーションとAPIを別々に管理していると、保護範囲に抜け漏れが生じやすくなります。WAAPでは、両者を一体で監視・保護できるため、攻撃者がAPIを直接狙った場合でも異常を検知しやすくなります。
セキュリティ運用の効率化
WAF、APIセキュリティ、Bot対策、DDoS対策を個別に運用すると、管理画面やログが分散し、運用が複雑になります。WAAPでは、複数の脅威への対策を統合的に管理できるため、担当者の負荷を軽減できます。
サービス可用性の向上
DDoS攻撃やBotによる大量アクセスは、Webサービスの停止やレスポンス低下を引き起こします。WAAPを活用することで、不正なアクセスを抑制し、正規ユーザーに安定したサービスを提供しやすくなります。
属人化しにくいセキュリティ運用
WAAPによりログやポリシー管理を一定程度統合できれば、担当者ごとの知識や経験に依存しない運用が可能になります。セキュリティ人財が限られる企業ほど、この点の効果は大きくなります。
WAAPが有効な企業・システム
WAAPは、特に以下のような企業・システムで検討価値が高い対策です。
- ECサイト:Botによる買い占め、不正ログイン、スクレイピング、DDoSリスクに対応
- 会員向けWebサービス:Credential Stuffing対策、アカウント乗っ取り防止
- SaaS事業者:WebアプリケーションとAPIを一体で保護
- APIを公開している企業:Shadow APIの把握と保護
- 金融・決済サービス:厳格な認証・監査要件への対応
- マルチクラウド環境の企業:統一的なセキュリティポリシー適用
7. WAAP導入でよくある課題と対策
WAAPは優れたセキュリティ手法ですが、導入プロセスや運用設計を誤ると期待した効果が得られません。導入時によくある3つの課題と対策を解説します。
課題1:社内のWebアプリ・APIの全体像(棚卸し)が
把握できていない
開発部門や外部委託先が個別に作成したAPIや、過去に構築して放置された「Shadow API」が存在すると、WAAPを導入しても保護対象から漏れてしまいます。対策: 導入前に公開Webサイト、外部連携API、社内API、開発・検証環境のAPIを一覧化しましょう。自力での把握が難しい場合は、APIの自動検出機能を備えたWAAPを選ぶのが有効です。
課題2:正規アクセスを遮断してしまう「誤検知」への懸念
セキュリティ強度を上げすぎると、一般ユーザーのアクセスやSEO用のクローラーまで遮断してしまい、売上や利便性に悪影響を及ぼすリスクがあります。対策: 導入初期は通信を遮断せずログのみを記録する「検知モード(モニタリングモード)」で運用し、自社サイトの通信傾向を把握してから段階的に「防御モード」へ移行しましょう。
課題3:アラート対応やルール更新などの「運用リソース」不足
WAAPによりツール自体は統合できても、日々発生する検知アラートの確認や、アプリ改修に伴うルール(シグネチャ)の調整など、一定の運用負荷が発生します。対策: 社内での一次対応者・判断者を事前に定めておくか、運用を社外に任せられる「マネージドサービス(SOC(Security Operations Center)連携・ベンダー運用支援)」の活用を検討しましょう。
8. WAAP選定ポイント|よくある失敗例と確認すべき項目
WAAP製品を選ぶ際、スペック表の機能一覧だけで比較すると、導入後に「自社の環境に合わなかった」という失敗に陥りがちです。よくある失敗例から選定のポイントを学びましょう。
失敗例1:WAF機能の充実度だけで選んでしまう
【失敗の理由】 従来のWAFと同等の基準で製品を選んだ結果、API特有の脆弱性対策(BOLA:Broken Object Level Authorizationなど)や、高度なBot検知(行動分析など)の機能が不十分だった。 選定ポイント: 単に通信を止めるだけでなく、「APIの自動検出機能があるか」「Botの振る舞い検知(良性/悪性の識別)ができるか」など、WAAPならではの機能精度を確認する。
失敗例2:自社の運用体制に合わない「高機能すぎる製品」を
選んでしまう
【失敗の理由】 自由度の高い詳細設定ができる製品を選んだが、社内にセキュリティ専門家がおらず、チューニングや運用を使いこなせなかった。 選定ポイント: 管理画面の使いやすさ(UI:User Interface)はもちろん、ベンダーによる誤検知のチューニング支援や、24時間365日の運用監視代行(マネージドサービス)が含まれているかを重視する。
失敗例3:既存のシステム環境・CDNとの相性を確認していない
【失敗の理由】 すでに導入しているCDN(Content Delivery Network)や認証基盤、SIEM(Security Information and Event Management)(ログ管理ツール)と連携できず、二重でコストがかかったりログの一元管理ができなかったりした。 選定ポイント: 構成変更が最小限で済む接続方式(DNS:Domain Name System)切り替え型、エージェント型など)か、既存のネットワーク・クラウド環境(マルチクラウド対応)とスムーズに連携できるかを確認する。
失敗例4:導入の「目的の優先順位」が決まっていない
【失敗の理由】 「今一番解決したい脅威」が曖昧なまま選んだため、不要な高額オプションを契約してしまい、最も防ぎたかったBot攻撃への対策が手薄になった。 選定ポイント: 「API保護を強化したい」「大量のBotによる不正ログインを防ぎたい」「DDoS攻撃からサービスを守りたい」など、優先して解決すべき自社の課題を明文化してから選定に入る。
9. WAAPに関するよくある質問
- WAAPとWAFの違いは?
WAFはWebアプリケーションへの攻撃を防ぐ対策で、WAAPはAPI保護・Bot対策・DDoS対策まで含めた包括的なセキュリティ対策です。 - WAAPはどのような企業に必要ですか?
Webサービス、API、会員機能を提供する企業に適しており、特にEC、SaaS、金融、マルチクラウド利用企業に有効です。 - WAAPを導入すればAPIセキュリティ対策は十分ですか?
WAAPは有効ですが、API設計、認証・認可、開発プロセスなども含めた総合的な対策が必要です。OWASP API Security Top 10なども参考にしながら、開発・運用全体でAPIセキュリティを考えることが重要です。 - WAAP導入で最初にすべきことは?
Webアプリケーション、API、認証方式、Shadow APIを含む保護対象の棚卸しから始めるのが基本です。 - CDNとWAAPの違いは?
CDNはコンテンツ配信の最適化を目的とする仕組みで、WAAPはWebアプリケーションとAPIを保護するセキュリティ対策です。両者は目的が異なりますが、組み合わせて利用されることもあります。 - WAAPは中小企業にも必要ですか?
Webサービスやオンライン販売、会員機能などを提供している場合、規模に関わらず検討する価値があります。特にBotやCredential Stuffingは、企業規模を問わず被害が発生する脅威です。
10. まとめ
WAAPは、WebアプリケーションとAPIを包括的に保護するためのセキュリティ対策です。WAFに加え、APIセキュリティ、Bot対策、DDoS対策を統合的に扱えるため、クラウドやAPI連携が前提となる現代のWebサービス環境に適しています。
OWASPが公開する「Top 10 – 2021」「API Security Top 10 – 2023」でも、Webアプリケーション攻撃、認証不備、Shadow APIといった脅威が主要リスクに位置づけられており、これらに包括的に対応するうえで、WAAPの考え方は今後さらに重要性を増すと考えられます。
導入時には、機能の有無だけでなく、APIの可視化、Shadow API対策、Bot対策の精度、運用負荷、既存システムとの連携まで確認することが重要です。また、目的を明確化したうえで選定を進めることで、過剰投資や不足リスクを避けることができます。
自社のWebアプリケーションやAPIの利用状況を整理し、必要な保護範囲を見極めたうえで、WAAP導入を検討することが求められます。
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