デジタルマーケティングソリューション
AIが加速させる、次世代
ロイヤルティプログラムの最新動向
【講演レポート】AIが加速させる、次世代ロイヤルティプログラムの最新動向

2026年3月3日、半期に一度のマーケティングイベント「MarkeZine Day 2026 Spring」が開催されました。
顧客との継続的な関係を構築する施策「ロイヤルティプログラム」の代表的な仕組みであるポイントサービスは、従来の販促・値引きから、エンゲージメントを高めるマーケティングツールへと進化しています。現在、ロイヤルティプログラムは顧客の感情や体験をより重視する形へと変わり、顧客理解にはAI活用が鍵となっています。
本セッションでは、次世代ロイヤルティプログラムでAIが果たす役割や活用の方向性について、日立ソリューションズのデジタルソリューションサービス部長を務める渡邉浩史が、海外の最新事例を交えながら解説しました。
AIが加速させる、次世代ロイヤルティプログラムの最新動向

ビジネスイノベーション事業部 デジタルソリューションサービス部
部長
渡邉 浩史
ロイヤルティ戦略の鍵となるポイントサービス
買い物、食事、交通といったさまざまな場面で消費者と企業をつなぎ、今や生活の中に当たり前にあるポイントサービス。「ポイント大国」と呼ばれる日本のサービス市場規模は拡大し続けています。
ポイントサービスは大きく「自社ポイント」と「共通ポイント」に分けられます。自社ポイントは企業が独自に発行し、自社店舗やECサイトなどで利用されます。設計・運用の自由度が高く、蓄積した顧客データを自社で活用しやすいのがメリットです。一方の共通ポイントは、複数の企業・店舗で利用できるもので、大手通信事業者や決済事業者などが運営してポイント経済圏を形成しています。認知度の高さを武器に新規顧客を獲得しやすく、短期的にキャンペーン効果を得たい場合に有効です。
自社ポイント活用のトレンドとして、企業グループ内で独自のポイント経済圏を構築するケースが増えています。
例えばアパレルや外食産業では、複数ブランド間のポイント共通化や自社EC・店舗の会員IDの一元化が進んでいます。鉄道事業者は乗車ポイントに加え、百貨店やスーパー、ホテルなどグループ企業のサービスで共通して使えるポイントを整備しています。
金融の分野では、銀行の口座開設や給与振込などの金融取引に応じてポイントが付与されるサービスが始まっています。貯まったポイントは共通ポイントへの交換、地域通貨としての利用が可能で、地域活性化にもつながる取り組みとして注目されています。
一方共通ポイントにおいては、複数の共通ポイントを戦略的に活用しながら、広範囲の顧客接点と話題性の獲得をめざす「マルチポイント化」が進んでいます。例えばコンビニエンスストアは複数の共通ポイントに対応することで、集客に加え、顧客との接点強化を図っています。また、自動販売機におけるキャッシュレス決済の普及に向けた仕組みとして、共通ポイントで飲み物が購入できるキャッシュレスアプリも話題を集めています。
「近年は、自社ポイントと共通ポイントを組み合わせたハイブリッド型の戦略も増えています。共通ポイントで新規顧客を獲得し、集めたユーザーを自社ポイントに誘導してロイヤル顧客を囲い込むモデルです」(渡邉)
ポイントサービスは「値引き」から「エンゲージメント」へ
値引きから始まったポイントサービスがエンゲージメントへと続いていく進化は、大きく3段階に分けることができます(※1)。
(※1)出典:㈱エムズコミュニケイト 岡田祐子(2025).『ポイントサービス3.0 エンゲージメント時代のポイント戦略』.中央経済社
1900年代のサービス黎明期は、スタンプカードやポイントカードによる値引き目的の金銭的インセンティブが中心でした(ポイントサービス1.0)。2000年代に入るとCRM・データ活用を目的としたポイントサービス2.0として、顧客の囲い込みを図るロイヤルティプログラムへと発展します。
現在はポイントサービス3.0の時代に入り、企業やブランドへの愛着・信頼を醸成し、エンゲージメントを高めるマーケティングツールへと進化しています。イベントへの参加、SNSでの情報共有、レビュー投稿など、顧客の行動そのものを評価してアクションポイントを付与する仕組みです。
「ポイントサービス2.0が“選ばれる仕組み”とすれば、ポイントサービス3.0は“関わり続ける仕組み”です。私たちはこれを次世代ロイヤルティプログラムと定義しています」(渡邉)

図1【ポイントサービスの進化】
次世代ロイヤルティプログラムの例としては、デジタル金融業のゲーミフィケーション、飲料メーカーのヘルス・ウェルネス、製造小売業の環境保護・社会活動への寄付、空運業における限定コラボ商品・体験との交換などがあります。
AIエージェントによるハイパーパーソナライゼーション
エンゲージメントを高めるマーケティングツールへと進化した次世代ロイヤルティプログラムの実現には、3つの課題があります。
1つ目は、膨大な個客データとその複雑性です。購買データだけでなく多種多様な個客アクションデータを統合して顧客一人ひとりの「文脈」までを理解しようとすると、人手では限度があります。
2つ目は、大規模パーソナライゼーションの限界です。一律のキャンペーンやセグメントでは、顧客に「自分だけの特別感」を提供することはできません。コスト面や運用面でも人手での対応では困難です。
3つ目は、リアルタイム・フィードバックの限界です。顧客のエンゲージメント行動に応えるには、その瞬間に報酬を与える必要がありますが、従来のバッチ処理や手動運用では行動と報酬の間にタイムラグが生じます。
これらの課題を解決するのが、膨大なデータ処理とリアルタイム対応を実現するAIエージェントです。
「マルチタスクに対応し、自律的に動きながら改善や外部連携を自動で行うAIエージェントであれば、人手の限界を打ち破り、顧客の行動背景や価値観を深く読み解くことができます。これにより、『個』の文脈に即応した特別な体験を自律的に提供する『ハイパーパーソナライゼーション』が実現します」(渡邉)

図2【AIエージェントによる課題解決】
AIエージェントが自律的に実行するロイヤルティ施策の1つが、顧客データから将来の優良顧客を自動で見つけ出す優良顧客化です。購買履歴/会員情報/SNS反応/来店ログ/アクションデータなどから、ランクアップする可能性の高い顧客を自動で抽出し、個に向けた「特別感のあるメッセージや画像」コンテンツを自動的に生成してオファーします。ランクアップした対象者に自動でポイントを付与し、「限定イベントへの招待」や「先行購入権の付与」など、金銭以外の価値への交換を促します。

図3【AIエージェントが自律実行するロイヤルティ施策例:優良顧客化】
「顧客レビューなどの行動が評価され、ランクアップが実現すればブランドへの愛着は深まります。企業にとっても、伸びしろのある顧客に絞り込むことでコストを最適化できます。マーケターもオペレーション業務から解放され、体験設計などのクリエイティブな施策にリソースを集中できます」(渡邉)
AIエージェントによるロイヤルティ施策としては、誕生日以外の記念日にもインセンティブを提供するサプライズ、VIP顧客への優先予約招待、顧客の興味関心に合わせてコンテンツを提供するパーソナル・キュレーション、反応率に応じて還元率を自律変動させるダイナミック・ポイントなどが挙げられます。
AI活用の海外先進事例
続いて、日立ソリューションズの協業先である台湾のIT企業、TURN CLOUD社(正式名称:TURN CLOUD TECHNOLOGY SERVICE INC.)が実施しているAIを活用した次世代ロイヤルティプログラムの事例を4点紹介しました。
1点目は、AI POSを活用した接客コンシェルジュです。POSに搭載したAIカメラが来店客を瞬時に判別して登録情報にアクセスし、属性に合わせて広告やクーポンを顧客向けのディスプレイに表示します。店員は顧客の視線解析データ、購買履歴などからAIが分析した結果をもとに、おすすめ商品やインセンティブの提案が可能です。
「スタッフ側のディスプレイ表示では、顧客の行動履歴に基づいた声がけのアイデアを確認できるため、属性に応じた接客や顧客体験の提供が可能です」(渡邉)
2点目は、AIによる広告の自動制作です。商品画像をアップロードすると、該当商品のレビュー投稿やSNSのトレンド/話題をリアルタイムに分析し、広告コンテンツを自動生成します。これにより市場の熱量やファンの感情に即応した広告提示が可能になり、深い愛着の醸成につながります。導入した台湾の大手小売業では、広告制作コストが90%近く削減されたという成果も出ています。
3点目は、AIを活用してクリスマスに行われた参加型キャンペーンです。キャンペーンサイトにユーザーが顔写真を投稿し、気分や興味関心を選択すると、AIが顔写真と背景画像を合成、さらに新年の運勢占いがついたデジタルカードを作成します。
「ユーザーが“自分だけの画像”をSNSでシェアすることで自然な形で拡散された結果、約200万インプレッションを創出し、14万人の新規会員登録を達成しました」(渡邉)
4点目は、リファラルマーケティングです。登録会員の中から、インフルエンサーになりそうな会員をAIで抽出し、SNSで友人・知人へのおすすめ商品のシェアを依頼します。そこから商品が購入されると紹介者にポイントなどのインセンティブを付与します。
「ブランドへの愛着を持つファンが情報の送り手・紹介者となることでコミュニティ全体の熱量が大きくなり、コンバージョン率や購入につながります」(渡邉)
体験と感情を通じて関係性を育てるマーケティング戦略へ
最後に渡邉は、次世代ロイヤルティプログラムはAIによって加速すると指摘しました。
「ポイントサービスはエンゲージメントへ拡張され、日常の行動/体験そのものを評価する時代になりました。そのためにはAIエージェントが施策を自律的に実行し、顧客に適した体験や報酬をリアルタイムに提供していくことで、一人ひとりの文脈に応じた特別な体験を届けることが可能になります。次世代ロイヤルティプログラムは、体験と感情を通じて関係性を育てるマーケティング戦略といえます」(渡邉)
デジタルマーケティングソリューションによる支援
日立ソリューションズが2006年より提供しているデジタルマーケティングソリューション「PointInfinity」はすでに50社超の企業に導入され、管理会員数は約4億人に達します。2026年3月2日にはAIエージェントによってマーケティング業務の自動化を加速する「PointInfinity AIエージェント連携ソリューション」をリリースしました。共通ポイント利用のゲートウェイサービスや、海外出店時の支援ソリューションも用意しており、「関係性を育てる」デジタルマーケティング戦略をトータルに支援します。
>> AIエージェントがLTV最大化とマーケティング業務自動化を支援するソリューションを提供開始
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