デジタルマーケティングソリューション
“選ばれるブランド”への第一歩
デジタルマーケティング×
ポイント活用トレンド最前線
【講演レポート】“選ばれるブランド”への第一歩 デジタルマーケティング×ポイント活用トレンド最前線

2025年8月5日にオンラインイベント「TECH+セミナー Marketing Day 2025 Aug. シン・ブランド戦略」が開催されました。
顧客との接点が多様化し、市場競争が激化する現代において、企業が顧客から「選ばれる」ためのブランド戦略はますます重要性を増しています。その鍵を握るのが、今や私たちの生活に深く浸透した「ポイントサービス」です。単なる値引きツールから脱却し、顧客とのエンゲージメントを深め、ブランド価値を向上させるための戦略的投資へといかに転換させるか?
本セッションでは、ポイント活用の最新動向からそれを支えるAI技術の進化まで、具体的な事例を交えて日立ソリューションズのシニアエバンジェリスト、日高智美が解説しました。
“選ばれるブランド”への第一歩 デジタルマーケティング×ポイント活用トレンド最前線

ビジネスイノベーション事業部 デジタルソリューション本部
シニアエバンジェリスト
日高 智美
「ポイント経済圏」が顧客を囲い込み、ブランド価値を向上させる
普段の買いもの、サブスクリプションサービスの利用、ゲームへのログイン———。ポイントという仕組みは今や、私たちの生活に深く浸透しています。
「ポイントは消費者と企業をつなぐ1つの手段であり、『体験』と『関係づくり』の糸口となっています。この関係づくりをうまく活用すれば、再来店を促し、利用を促進することにつながり、ひいては自社のブランディングにも貢献できます」(日高)。
キャッシュレス決済や「ポイ活」の普及などにより、国内のポイントサービス市場は緩やかに拡大傾向にあります。近年では、ポイントプログラムで形成される「ポイント経済圏」という概念も一般的になってきました。
ポイント経済圏とは、ポイントを軸に複数サービス、共通ポイントであれば複数企業のサービスを横断的に連携させることで、消費者の消費活動を経済圏内に囲い込む仕組みを指します。消費者は統一のIDを持ち、その行動データを企業がデジタルマーケティングに活用することで、顧客接点を充実させ、ブランド体験の向上につなげることができます。
「この動きは、巨大なポイントプラットフォームに限った話ではありません」(日高)。近年は、アパレル、鉄道、飲食チェーンといった、消費者とのリアルな接点を持つ生活密着型の業種でも、独自の経済圏を形成する動きが加速しています。グループ企業内での連携や、共通ポイントと自社ポイントの組み合わせにより、これまでアプローチできなかった層を取り込み、独自の経済圏を築いているのです。
施策も多様化しており、ポイント獲得数に応じた「ロイヤルティランク制度」といった従来型の手法に加え、ポイント投資や、ゲームコンテンツの提供、限定イベントへの招待といったエンターテイメント性の高いもの、さらにはポイント寄付のような社会貢献活動に至るまで、その活用範囲は広がり続けています。
自社ポイントか、共通ポイントか? 戦略で決まる最適解
ポイント戦略を検討するうえで、多くの企業が直面するのが「自社ポイント(ハウスポイント)」と「共通ポイント」のどちらを導入すべきか、という問いです。
自社ポイントは、企業が独自に発行するポイントで、設計・運用の自由度が高く、顧客データを自社で蓄積・活用しやすいという特長があります。
アパレル業界では、自社ブランドの訴求が重要なため、ポイントを単なる金額での還元手段とせず、会員のランク付けや特典付与に活用する例が多いです。接客は重要な顧客接点とされており、顧客理解を深めより精度の高い接客をするため、実店舗とECの連携や顧客データ活用が進められている点においても、自社ポイントとの親和性が高いと言えます。
一方、共通ポイントは複数の企業・店舗間で共有して使えるポイントプログラムで、認知度と利用頻度が高く、一定の安心感があります。まだ知名度が十分でない企業や、新しい顧客層を増やしたい場合に効果的と言えます。
コンビニ業界では、かつて「1業種1社」の縛りがあったが、近年では複数の共通ポイントを扱う店舗も登場し、幅広い層を取り込んでいます。競争が激しく差別化が難しい業界において、複数の共通ポイントに対応することで消費者に選ばれる理由を増やし、これを起点に自社会員化を進めています。
「自社ポイントと共通ポイントにはそれぞれの特長やメリットがあり、一概にどちらが良い・悪いとは言えません。自社の戦略、ブランドの特性、顧客との関係性に応じて、うまく使い分けたり、組み合わせたりすることが必要です」(日高)。

図1【自社ポイントと共通ポイント、どちらが良いのか?】
自社ポイントと共通ポイントをうまく組み合わせている好例が、ドラッグストアです。競争の激しいドラッグストア業界では、共通ポイントに加盟して広く集客しつつ、自社独自のクーポンやアプリと連携したウェルネス関連の施策で顧客との関係性を深めるといった活用が進んでいます。
「もちろんポイント原資の負担は増えますが、単なる値引きに終わらない制度設計や顧客データの収集・活用を通じて、負担を上回る効果を期待しています」(日高)。
AIエージェントが切り拓く、次世代のマーケティング戦略
講演の後半では、マーケティングにおけるAI活用の進化について詳しく解説しました。
AIは単なる補助者(アシスタント)から、自律的にタスクを実行する代理人(エージェント)、そして人と共に働く協働者へと進化しています。現状、特に注目されるのが「AIエージェント」です。これは、人間のようにタスクを理解し、自然言語での指示に基づき、必要な調査や処理を自律的に実行するソフトウェアを指します。マルチタスクが可能で、大量のデータを取り扱うことができ、さらに自己改善も可能です。
「マーケティングの領域では、データに基づく精度の高いレコメンドやプロモーションの自動設計、コンテンツ生成などへの活用が期待されています。これまでもルールベースのパーソナライズはありましたが、AIを活用することで、その精度は飛躍的に向上します」(日高)。
日立ソリューションズでも「マーケティングコンシェルジュ」と呼ぶ取り組みを開始しています。これは、マーケターの代わりにAIがキャンペーン施策の企画から評価までを行い、マーケティングの効率化と高度化をめざすものです。
「たとえば、『前年と比べてポイント数が変化しているが、なぜか?』と自然言語で問いかけると、AIがその傾向を可視化し、原因の深掘りまで行ってくれます。また、『売上を上げるための具体的なキャンペーン施策を考えてほしい』と依頼すれば、過去のデータをもとに、属人的になりがちな施策立案をAIが担い、具体的な候補を挙げてくれるのです」(日高)。
AIとポイント施策の融合で、新次元のパーソナライズへ
AIの進化に伴い、ポイント施策も大きく進化しています。AIが得意とするパーソナライズの領域において、「誰に」「いつ」「どのような体験を届けるか」を顧客一人ひとりに対して個別にカスタマイズすることが可能になりました。
レコメンドはわかりやすい例ですが、その際に獲得するポイントの特典を変えたり、ランクアップや活動の達成度合いに応じた特典内容をカスタマイズしたりすることで、より顧客の行動変容に寄与できます。また、一人ひとりに対する適切なタイミングやチャネルを選んで顧客へアプローチすることも可能です。
具体例として、「休眠アラート」というサービスを紹介します。これは、顧客のブランドへの温度感をAIエージェントが観測し、離反しそうな顧客へのアプローチ方法を自動でレコメンドするものです。来店が途絶えている、購入金額が下がっているといった休眠予備軍に対し、顧客が興味を持ちそうなレコメンド情報やポイントのインセンティブ施策を設定。アプローチした効果を蓄積し、さらに適切なアプローチをAIが考察・学習していきます。

図2【ポイント施策へのAIエージェント活用例】
「休眠アラート」は離脱しそうなアカウントに対して再接点を作る
「分析から施策コンテンツの生成、顧客へのアプローチまでの一連のフローをAIエージェントが担う日も近いかもしれません」(日高)。
先進事例に見る、ポイント施策成功のポイント
日立ソリューションズが手がけた2つの先進事例を紹介します。
東武鉄道様の事例では、クレジットカード保有者が中心だったポイント施策をグループ共通施策へと拡大。グループ各社の顧客を一元管理し、グループ全体の経済圏活性化に取り組んでいます。ポイントの基盤として、日立ソリューションズのデジタルマーケティングソリューション「PointInfinity」を採用。今後のOne to Oneマーケティングに取り組むためのCRM基盤となっています。
東武鉄道様の事例については、以下の記事で詳しく紹介しています。
>> 東武鉄道様 導入事例
ファミリーマート様の事例では、会員アプリ「ファミペイ」において、自社電子マネーと複数の共通ポイントを連携させ、独自の経済圏への囲い込みを強力に推進しています。この複雑な連携を実現しているのも、同じくPointInfinityです。
ファミリーマート様の事例については、以下の記事で詳しく紹介しています。
>> ファミリーマート様 導入事例
これらの事例は、日立ソリューションズが単にシステムを構築するだけでなく、企業のブランド戦略や経済圏構想という大きなビジョンを確かな技術力で支えるパートナーであることを物語っています。
ブランド育成の鍵は、戦略的ポイント活用とそれを支える伴走パートナー
講演の最後に、最も重要なメッセージとして次のように語りました。
「ポイントは単なる値引きツールではなく、ブランドと顧客の接点として重要な役割を担います。ポイントは『経費』ではなく、『ブランド』への投資なのです。だからこそ、企業はブランド戦略のなかにポイント活用を明確に位置づけ、顧客体験の向上と関係づくりに生かしていく必要があります。そして、その実現のためには、AIやデータ活用がもはや必須の状況といえます」(日高)。
ポイント戦略から最先端のAI活用まで、企業のデジタルマーケティングが直面する課題は複雑かつ高度になっています。豊富な知見を持つ企業のサポートを活用しながら、戦略的なアプローチを取ることが、成功への鍵と言えそうです。
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