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ビジネスコラム

【専門家コラム】「電子帳簿保存法制度改正。企業が電子契約の導入に向けて対応すべきこととは?」

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【専門家コラム】「電子帳簿保存法制度改正。企業が電子契約の導入に向けて対応すべきこととは?」

この記事の概要

リモートワークが普及する中、多くの企業でペーパーレス化やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に取り組んでいます。
契約書の電子化については、

  • ①書面でやりとりした契約書をスキャン(電子化)して保管する
  • ②電子でやりとりした契約書を電子データで保管する

という方法のほか、従来は紙の契約書でやり取りをしていた取引先とも今後は電子契約に変える、というケースも考えられます。

どのケースも、実務上はさまざまな課題を抱えています。 特に考えなければならないのが、令和4年1月1日から施行されている電子帳簿保存法改正との関係です。 そこで今回は、今後の電子契約の導入に向けて対応するべきことは何か、株式会社日立ソリューションズ スマートライフソリューション事業部の植木が答えます。

監修者

株式会社日立ソリューションズ スマートライフソリューション事業部 ビジネスコラボレーション本部 ビジネスコラボレーション関西推進部 第1グループ グループマネージャ 植木 伸補

株式会社日立ソリューションズ
スマートライフソリューション事業部 ビジネスコラボレーション本部
ビジネスコラボレーション関西推進部 第1グループ
グループマネージャ

植木 伸補

契約書の電子化には、電子帳簿保存法対策が避けて通れない

契約書は、電子帳簿保存法上でどのような取扱いをすればよいか

電子帳簿保存法は文書の種類によって対応が変わりますが、契約書については、次のような対応が求められています。

  • ・紙の契約書・・・自社が発行したもの、相手から受領したもの問わず、スキャナ保存の要件を満たせば、紙の原本に代えてスキャンした電子データを原本として保管することができる(スキャナ保存の対象)
  • ・メールや電子契約サービスなどを経由して受領した契約書・・・一定要件を満たしたうえで、電子データとして保存(紙での保存では不十分)

令和4年1月1日の電子帳簿保存法改正では、適正事務処理要件が廃止される、一定要件を満たせばタイムスタンプが不要になるなど、スキャナ保存の要件が緩和されました。 その一方で、電子取引によって受領した契約書は電子データとして保存しなければならないという要件が追加されました。

従来の運用であれば電子メールに添付されていた契約書を紙にプリントアウトして保存しておけばよかったものが、今後は一定の要件を満たしたうえで電子データとして保存しておかなければ、電子帳簿保存法の要件を満たさなくなってしまいます。

そのため、電子データを保存するための仕組みや体制を整えることができず改正された電子帳簿保存法に対応することが難しい企業も多くありました。

電子帳簿保存法改正に関連して企業が抱えている課題

業務ごと、支店や営業所ごとに運用がバラバラ

企業によっては、契約事務はすべて本社で一括して行う運用体制をとっているところもありますが、支店や営業所ごとに取りまとめて契約書を保管している企業も少なくありません。 また、電気・ガス業や通信販売など、大量の顧客とのやり取りが発生する業種では、部署ごとに契約書を作成・保管するケースもあるでしょう。

そのため、契約書の保存方法や保存先が各支店や営業所ごとに独立しており、契約情報を本社で一括管理ができておらず、適切な統制や共有が課題となっています。

文書によって保管先が異なるため、検索に膨大な手間がかかる

紙の契約書をスキャンした電子データと電子取引によって受領した契約書の電子データ、さらには、見積書や請求書といった契約書の関連書類についても、保管先がバラバラになると業務に支障が生じます。

検索に時間がかかってしまうのはもちろん、必要な情報を見つけられない、契約書はあっても契約に至るまでの過程が共有されていないなど、全体像が把握しにくくなってしまうのです。

特に問題になりやすいのが、前任者が保管した契約書が見つからない、契約に関連する見積書などの書類が保存されていない、契約に関与するメンバーが契約内容を把握できない、といったケースです。

電子契約化を進めるためには、文書の保存だけでなく取扱いの体制も整える必要がある

こうした課題を解決するためには、電子帳簿保存法に適合するように文書を電子保存するための仕組みや体制を整えることが重要です。 具体的な対応策としては、次の3点が挙げられます。

  • ・スキャンデータや電子データなどの種類にかかわらず、文書を一元管理できる環境を整備する
  • ・業務システムからもデータの保管場所が把握できるよう、相互関連性を保持する。
  • ・契約書だけでなく、関連する見積書などの書類も一元管理する

このような対策をとることによって、検索にかかる人的コストや経済的コストを大幅に軽減することが可能です。 さらに、保存するための仕組みだけでなく、取引先の相手と脱ハンコやデジタル化に向けての合意形成、文書の授受の仕方などの見直しも必要となるでしょう。

電子帳簿保存法改正に対応した文書管理システムとして、日立ソリューションズでは「活文」というソリューションを提供しています。 活文には電子取引で受領したデータや電子契約、紙の書類をスキャンした電子データのほか、業務システムから出力した帳簿書類に至るまで、あらゆる文書をまとめて保管することが可能です。

また検索機能も充実しており、取引年月日や取引先、金額のほか、さまざまな検索語句で検索ができるよう、AIが自動的に情報を抽出します。 手作業で検索語句を設定する必要がないため、「保存作業の効率が大幅に改善した」と、導入した多くの企業に喜ばれています。

「活文」の導入事例

日立ソリューションズでは、システム構築から導入コンサルティングに至るまで、必要に応じてワンストップでサポートする体制が整っています。 そのため、「単に電子帳簿保存法改正に対応するだけでなく、社内全体のペーパーレス化を視野に入れて環境を整えていきたい」、「さまざまな業務システムを使いつつも、帳簿書類や各種文書は一元的に管理したい」といった課題を持つお客様にも多く選ばれているのです。 そこで、実際に「活文」を導入した企業の事例を、抱えていた課題とともにご紹介します。

石油・ガス・エネルギー業 A社様

契約書を中心に電子化を推進するため、電子署名サービス「DocuSign(ドキュサイン)」を導入しました。 ドキュサインで締結した契約書を中心に、電子取引した文書を統合的に電子帳簿保存法の要件に沿った形で保管する必要があったため、「活文」をご導入いただいたのです。 今後は、過去の紙契約の電子保管も含め統合的な管理を検討されております。

電力・ガス業 B社様

「文書管理システムを導入するとともに、脱ハンコを進めたい」というご要望がありました。 そのため、まずは現時点での文書の種類や運用方法を整理し、各文書に適した運用方法を整理するためのサポートを日立ソリューションズで行っています。

将来的には、押印基準や管理基準を整え、新たな運用ルールを構築する予定です。

脱ハンコに対して、企業はどのような対応をするべきか

脱ハンコに対して、企業はどのような対応をするべきか のイメージ

電子契約を導入して、従来は紙の契約書でやり取りしていた既存の取引先との契約書を電子化するケースも増えています。

契約書を電子化することで、次のようなメリットが挙げられます。

  • ・押印のために出社する必要がなくなるため、自社だけでなく取引先の担当者にも出社する手間をかけさせずに済む
  • ・郵送費、印紙代などのコストが節約できる

契約書の電子化を進めるにあたり、ポイントとなるのが「脱ハンコ」です。 従来、契約書は紙に印刷し、当事者が署名・押印してそれぞれ一部ずつを保管するというスタイルでした。 しかし電子契約の場合は電子署名という方法で契約を締結するため、押印する必要がありません。

脱ハンコは意外に進んでいない

ところが、この「脱ハンコ」は多くの現場であまり進んでいないようです。 大きな理由としては、現場では脱ハンコがそこまで重要視されていないことが挙げられます。

「リモートワークとはいえ定期的に出社するから、そのときに押印すればいい」と考える社員も多く、便利であることは分かるが、電子化されていなくても不都合はない、というレベルに留まってしまっているのです。

もう一つの大きな要因としては、脱ハンコには取引先の協力が不可欠である点が挙げられます。

これまで紙の契約書でやり取りをしていた取引先に「次回の更新からは電子契約でお願いします」となると、取引先も押印ではなく電子署名で対応しなければなりません。

契約書を電子化することによって取引先の業務フローが変わり、イレギュラーが生じたときにどのように対応するかを逐一確認しなければならないなど、取引先に負担をかける可能性があるため、なかなか一方の判断では進めにくいのです。

経営的な側面で脱ハンコを進めるべきメリットは大きい

このように、現場では「必要性を感じない」とする声が上がることも多い脱ハンコですが、 経営的な側面で見たときには非常に大きなメリットがあります。

紙の契約書を印刷・製本して郵送し、押印をもらって返送された契約書を確認するという手間が発生し、契約締結までには短くても1週間、長ければ数週間かかることもあります。

契約締結までに時間がかかれば、その分ビジネスが動き出すのも遅くなってしまいます。 その点、電子契約であれば最短当日に締結することも可能となり、スピードを大幅に圧縮することができるのです。

ビジネスを開始するタイミングを大幅に前倒しできることで、大きな市場へのアドバンテージを生み出せる可能性もあります。 このような観点からも、脱ハンコを進めるメリットは大きいといえます。

脱ハンコを推進するため、まずは社内の意識変革が必要

では、具体的に脱ハンコ化をどのように進めていけばよいのでしょうか?

課題として挙がっていた「現場ではそこまで必要とされていない」という点については、 「脱ハンコによってこれだけ業務効率が上がる」「社員にとってもメリットがある」と社員が実感できるよう、 啓発活動を行う必要があります。

取引先から電子契約化の同意を得る点については、相手側の業務フローの変更なども伴いハードルが高いため、 契約書などの重要書類の電子化に取りかかる前に、まずは取引先の合意形成が必要な文書にすそ野を広げて、 導入ハードルの低い書類を選定して脱ハンコを進めるといいでしょう。 たとえば、下記のような書類がおすすめです。

  • ・グループ会社間など取引先との合意ハードルが低い書類
  • ・見積書など重要度が比較的低く、かつ数が多くて効果が大きい書類

脱ハンコの成功事例

「DocuSign eSignature」を導入して脱ハンコを推進。日立製作所の事例

株式会社日立製作所様 電子契約ソリューション(DocuSign eSignature)の導入事例

日立製作所では、ニューノーマルに対応した働き方を創造する「SMiLE for Work Innovation」プロジェクトを発足。 当プロジェクトの軸となったのが、「ペーパーレス化」と「ハンコレス化」でした。

プロジェクト実現のために、電子署名サービス「DocuSign eSignature」を導入。 段階的に導入を進め、契約締結業務を担当者や上長が出社する必要なく進められる体制を整えました。

また、文書の印刷枚数を2019年度に比べて約50%削減する見通しです(2022年2月現在)。

電子契約を推進する際は、電子帳簿保存法への対応を踏まえて将来を見据えた準備を

電子契約を導入するには、電子帳簿保存法改正への対応が不可欠です。 将来的に社内のペーパーレス化やDX推進まで視野に入れるとなると、単に電子帳簿保存法改正に対応したツールを入れれば終わりというわけではありません。 書類の「保管」と「取り扱い」をどちらもデジタル化することで、やっとDX推進、業務のペーパーレス化につながるのです。 そこまで見据えて、電子契約の運用に取り組んでみてください。

現時点で抱えている課題を洗い出すとともに、長期的目線での業務改革を視野に入れながら電子契約化を進めていきましょう。

ホワイトペーパー

  • 電子帳簿保存法とインボイス制度への対応状況に関する実態調査

    電子帳簿保存法とインボイス制度への対応状況に関する実態調査

    大企業(従業員501人以上)の調達・購買部門、経理・財務部門、システム企画部門、情報システム部門に所属する会社員・団体職員・経営者・役員 100名を対象に、「電子取引情報の保管方法」「電子取引情報の管理方法についての課題」「2023年7月までのインボイス制度の対応準備の有無」「「電子インボイス」または「デジタルインボイス」に対応した理由」「「電子インボイス」または「デジタルインボイス」を導入するにあたり、心配な点」などを聞きました。

  • 電子帳簿保存法改正への対応に関する調査

    電子帳簿保存法改正への対応に関する調査

    対応前の心配で最も多かったのはデータ保存ルールの整備と社内周知。20~60代の従業員1000人以上の大企業の会社経営者・役員、および総務、経理・財務部署に在籍している100人を対象に、「電子帳簿保存法の対応を行う前の心配点」「対応への課題解決のために行ったこと」「電子帳簿保存法の準備にかかった時間」「電子帳簿保存法の対応時に発生した問題点」「電子帳簿保存法への対応で大変だったこと」などを聞きました。

  • 電子帳簿保存法Q&A 税理士 袖山 喜久造氏 監修

    電子帳簿保存法Q&A 税理士 袖山 喜久造氏 監修

    電子帳簿保存法のスペシャリストである税理士の袖山 喜久造氏に、2022年1月1日に施行された令和3年度の改正電子帳簿保存法に関して、企業の皆様が抱いている疑問に回答いただきました。今後の電子帳簿保存法対応への取り組みのヒントとして是非、お役立てください。

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電子帳簿保存法に関するホワイトペーパーです。企業の実態調査などを掲載しています。

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